経団連くりっぷ No.168 (2002年4月11日)

WTOサービス自由化交渉に関する懇談会(司会 貿易投資委員会総合政策部会長 團野廣一氏)/3月22日

わが国労働市場における外国人の雇用状況および今後の対策・方針

−WTOサービス貿易自由化交渉「人の移動に関する検討会」第2回会合


WTOサービス貿易自由化交渉における「人の移動」に関する議論に関連して、わが国の外国人労働者に対する方針等について厚生労働省職業安定局の末廣啓子外国人雇用対策課長より説明をきいた。

  1. 外国人労働者の現状
  2. 現在、わが国で就労する外国人労働者は約71万人で、雇用される労働者全体の1%に相当する。このうち、合法的就労者は48万人(専門的、技術的分野は約15万人、日系人等は約23万人)、不法就労者は約23万人である。外国人労働者(直接雇用)の産業別内訳は、製造業約62%、サービス業約21%、職種別内訳は、生産工程作業員約62%、専門・技術・管理職が約18%である。

  3. 外国人労働者受入れの政府基本方針
  4. 第9次雇用対策基本計画(1999年8月)において、

    1. 専門的、技術的分野の外国人労働者については、経済社会の活性化ならびに一層の国際化を図る観点から、受入れを積極的に推進していくこと、
    2. 単純労働者の受入れについては、日本の経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすと予想されることから、十分慎重に対応すること、
    の2点が基本方針として定められた。
    専門的、技術的分野の外国人労働者については、数量制限等を設けているわけではなく、わが国の制度は比較的開けているといえる。具体的には、14の専門的・技術的分野が就労可能となっている。

  5. 受入れをめぐる最近の議論について
    1. グローバル化の進展とともに労働力の移動が活発化している。注目すべきは、高度な知識・技術を有する人材への需要が各国で高まっている点である。各国は、高度な知識・技術を有する人材を確保するために各種制度の見直しをしており、アジアも例外ではない。日本の場合は、むしろ制度的枠組みがあっても人が入ってこない点が問題だ。

    2. 低レベルの技能の労働者をどこまで受入れるかという議論もある。WTOでは途上国が低レベル労働者の受入れを求めている。わが国では、少子高齢化対策の一環として移民受入れを求める声があるが、このような単純な考え方は危険である。日本語教育、宗教、医療費等の社会的コストの負担問題、日本人の雇用に与える影響等について、十分な検討が必要だ。

    3. さらに、WTOの交渉では契約ベースの人の移動も新たな論点となっている。わが国の場合、労働者派遣法のもとでは、契約ベースの国境を越えた人の移動の取扱いが難しい。雇用主が日本の外に存在している場合、何か問題が生じても、日本政府として対応できる範囲は限られる。また、労働条件の劣悪化を招く恐れもある。
      いずれも難しい問題であるが、民間企業の意見を聴取しつつ議論を構築したい。


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