経団連くりっぷ No.169 (2002年4月25日)
資産の円滑な世代間移転に、税制の活用を
−住宅資金贈与特例の拡充による経済効果
現在の贈与税の仕組みは基礎控除額が受贈者1人あたり年間110万円となっており、住宅取得資金に係る贈与税特例を活用してもその枠は550万円になるにすぎない。
一方、相続税は定額控除額が5,000万円、さらに法定相続人1人あたり1,000万円が控除されることになり、親が子供世代に資産を移転する場合には、贈与するよりも相続するほうが有利な状況だ。
ところが高齢化に伴い、相続が行われるのは子が50歳を過ぎ、すでに孫が大学を卒業する年代になってからである。
経団連では、養教育費や広い住宅の取得など資金需要の旺盛な30〜40歳台の世代に、高齢世代からの資産の移転が円滑になされることを求め、住宅資金贈与特例による控除贈与税の控除枠を1,100万円まで拡充することを提言している。これによる直接の経済効果は2,435億円、全体の経済効果は5,235億円と試算される。
住宅資金贈与特例拡充(550万円→1,100万円)に伴う経済効果
【前提】 |
住宅購入金額3,528万円(2000年度公庫融資利用者調査による平均的マンション購入額)に必要な
借入金、年収を試算した上で効果を算定。 |
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基礎控除額 | 550万円(現行制度) → 1,100万円(550万円増) |
借入金額 | 2,782万円 → 2,507万円 (贈与分の1/2を頭金に) |
年間返済額(年利3.5%、30年元利均等返済) | 150万円 → 135万円 |
必要年収(年間返済額の5倍) | 750万円 → 675万円 |
贈与税非課税枠利用者数 | 29,108人 → 37,636人(29.7%増) |
住宅投資戸数の増加に伴う 直接経済効果 | 1,465億円 |
非課税枠拡充利用者の追加投資による 直接経済効果 | 970億円 |
原材料への生産誘発効果 および耐久消費財への波及効果 | 5,235億円 =(1,465億円+970億円)×2.15* |
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* 住宅投資の生産誘発効果、波及効果は直接投資の2.15倍(経済部門分析用産業連関表の概要より) |
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