経団連くりっぷ No.169 (2002年4月25日)

なびげーたー

東南アジア・ミッションの感想

常務理事 藤原勝博


3月28日から4月7日にかけて、今井会長を団長とする東南アジア・ミッションで、タイ、カンボジア、ベトナム、シンガポール、インドネシアをまわってきた。以下はその個人的な感想である。

この種の活動は、相当以前から3〜4年に1回くらいやっていたが、今井会長になってからは、ほぼ年1回のペースでASEANに行っている。今回も、各国の政府首脳、関係大臣、経済界と文字通り、膝をまじえてという感じで話合ってきた。中国の目覚しい経済発展を横目にして、わが国として、ASESNとの関係をどうするのか、ASEANは中国の台頭をどう見ているのか、ASEAN−中・韓−日本との関係、国際分業をどう展開していくのか、などが今回のテーマであった。ミッションの報告はいずれさまざまな場で行われるので、そちらに譲る。その代わり、周辺の感想を2つだけご報告したい。

第1は、成田空港のこと。11日間、5ヵ国の旅であるから、1日おきに飛行場を通る。そこで、アジア各地の新しい立派な国際空港に立つと、想いは成田空港に飛んでいき、思わず比較してしまう。わが国の玄関、成田空港は、開港以来24年が経過した。この間わずか1本の滑走路で我慢してきた。(やっと今月にジャンボ機の使えない暫定的な滑走路ができる)。アクセスも不便である。地方の乗客の場合、新幹線や羽田経由でなく、地元空港から直接韓国の仁川空港、香港空港などを経由して欧米に飛ぶほうが便利になるであろう。現在、日本国内の20の地方空港が仁川につながっている。上海の浦東新空港も近くにできた。2本目の滑走路は、2005年までにできるという。おまけに、航空会社が払う着陸料は成田と関空が断然高い。世界1、2位を占め、世界主要空港の3倍である。近隣国にハブ空港が3つもできれば、日本はまさに極東の小島になってしまうのではないか。

第2は農業問題。シンガポールと日本の経済連携協定に続いて、タイもFTA (自由貿易協定)を結びたいと提案した。10年後の中国−ASEANのFTAも合意された。小泉首相は1月、ASEAN歴訪の際、東アジア経済連携構想を発表した。しかし、WTOの世界で、農林水産業を全部除外したFTAは許されない。だから、世界最大の食料輸入国日本としては、「これは絶対駄目。これは国内措置を条件に自由化する」という議論が必要な段階にきている。例えば、東南アジアの人々は、日本で生産できない熱帯産フルーツくらいはたくさん買ってほしいと願っている。このままだと、日本は「遠い北方の隣人」になってしまうのではないか。海外のスピード感と日本のスピード感の違いを実感させられた。(4月11日記)


くりっぷ No.169 目次日本語のホームページ