経団連くりっぷ No.169 (2002年4月25日)

情報通信委員会 情報化部会意見/4月9日

「e-Japan重点計画」の見直しにあたって盛り込むべき施策を提言


IT国家戦略のアクション・プランである「e-Japan重点計画」の見直しを控えて、情報通信委員会(委員長:岸曉東京三菱銀行会長)では、既往の提言ならびに情報化部会(部会長:三吉暹トヨタ自動車副社長)における検討結果を踏まえ、政府が重点的に実施すべき施策を取りまとめ、4月9日、IT戦略本部へ提言した。以下は、同提言ならびに電子政府およびITS(高度道路交通システム)に関する情報化部会意見の概要である。

  1. e-Japan重点計画の見直しにあたって盛り込むべき施策に関する提言
    1. 高度情報通信ネットワークの形成
    2. (1) 通信事業の原則自由化:
      通信事業者の自由な創意工夫が遺憾なく発揮されるよう、競争促進の妨げとなる規制を緩和・撤廃(一種・二種事業区分および事業区分に基づく事前規制の撤廃、特定無線設備・端末機器の技術基準に関する供給者適合宣言方式の早期導入等)。

      (2) 新通信法の早期制定:
      利用者利益の最大化と自由かつ公正な競争の促進を目的とする法体系へ抜本的に転換(通信サービスの再定義、市場支配力に着目した競争ルールの確立等)。

    3. 行政の情報化、公共分野におけるITの活用
    4. (1) 効率的で質の高い電子政府の実現。
      (2) ITSの利用促進(詳細はII-2を参照)。

    5. 電子商取引等の推進
    6. 企業等の効率化を妨げる規制の総点検の実施等(請求書等の税務上の保存義務の見直し、各種法人に書面作成、備え置き等を義務付けている制度の見直し等)。

  2. 情報化部会意見
    1. 「効率的で質の高い電子政府の実現を求める」
    2. (1) 基本的考え方:
      1. 電子政府の実現は、ITを活用した政府・地方公共団体の変革・再生に他ならないことを再認識して、各種の施策を展開することが肝要である。
      2. 現状は、電子化が半ば目的化しており、業務改革、省庁横断的な類似業務・事業の整理、制度・法令の見直しなどが不十分である。
      3. 政府は、「2003年度」が電子化達成だけでなく、電子化に伴う業務改革等の目標年限でもあることを改めて銘記し、業務改革なきIT投資を厳に慎むとともに、電子化によってもたらされる成果を国民、企業に対し具体的に示す必要がある。量的な目標の追求を超えて電子政府の質的な充実を図るべきである。

      (2) 要望:
      国民、企業と行政との間の情報化に関して、以下に掲げるような方策を講じる必要がある。
      1. 電子政府のポータルサイトについて、例えば、企業関係の重要事項・手続に関する最新情報、具体的な手続方法の案内などを縦割りを排除した形でシームレスに提供する。
      2. 各府省策定の申請・届出等手続の電子化に関するアクション・プランにおいて、行政の効率化や国民、企業の利便性向上といった電子化がもたらす成果について目標を設定し、明示する。
      3. 地方公共団体の電子化にあたって、各団体に共通して必要な基盤を明確化し、システム仕様の標準化および申請・届出等手続に関するシステムの一元化を推進する。
      4. 電子的手段を利用した場合に手数料を減額するなどのインセンティブ措置を積極的に活用する。

      行政の事務・事業の情報化に関しては、(1)各府省間で共通の管理業務(人事・給与等)について、ITを活用した運用の連携・集中化、(2)コア以外の業務のアウトソーシングの不断の検討などが必要である。

      情報システムの企画、調達等のあり方の見直しについては、(1)各府省の情報システムなど関係部局の人材と予算を集めて責任とノウハウを集中し、システムの企画、調達、開発、運用を一元的に行うこと、(2)単年度契約、総合評価落札方式、入札参加制度など調達制度を見直す必要がある。

      IT戦略本部が、外部の専門家の協力も得て、申請・届出等手続の電子化に関するアクション・プランの策定、実行、見直しのサイクルおよび情報システムの調達等を評価・監視し、その結果を公表すべきである。

    3. 「ITSの利用促進に関する意見」
    4. (1) 基本認識:
      1. ITSは、交通問題、環境問題、高齢化問題等への有力な対応手段として期待され、国民が日常生活の中でIT革命を実感できる象徴的なものといえる。新規市場の創出、新たな雇用の確保、国際競争力の向上等を実現する上で重要な切り札となる分野である。
      2. しかし、具体的な将来展望が見出せず、ITS関係者に閉塞感が生まれているのが実情である。
      3. 今後、利便性の高いITSサービスの環境整備を効率的に推進していく必要がある。関係省庁が連携を強化するとともに、政府と民間が一体となって取り組むことが不可欠である。

      (2) 政策課題:
      環境変化を踏まえ、官民の役割分担を明確にした上で、国家戦略としてのITSに関する新しい全体構想と、その実現に向けたアクションプランを策定する必要がある。策定にあたっては、民間人が参加する省庁横断的な専門組織を設置する必要がある。また、省庁・部局毎に展開されている類似プロジェクトを整理統合するとともに、状況を踏まえて機動的にアクションプランを改訂すべきである。

      都市再生の観点から、ITSの実利用を図り、地域住民がITSの効果や利便性を実感できるようにすべきである。地方公共団体等においては、例えば、
      1. 交通状況に応じて信号を制御する新システムの導入や交差点のIT化など交通流マネジメントの高度化促進、
      2. 官民の保有する道路交通や観光などに関する情報を各種メディアを通じて利用し得る基盤を整備するなど、インターネットITSの環境整備、
      3. 公共交通機関の利用促進に資するパーク&ライドやエコカーの共同利用の促進、
      等が必要である。

      ITSに係る規制等の総点検を行うべきである。例えば、
      1. 有料道路自動料金支払いシステム(ETC)の普及・有効活用のための恒久的な通行料金割引制度の導入や専用レーンの拡大等、
      2. ビーコン等既存インフラの民間への開放のためのルール整備など、安価で利便性の高いインフラ基盤の整備、
      3. 公共機関・団体の所有するデータの利用料金等の一層の引き下げ検討、
      などの要望が企業から出されている。

      ITSの国際標準化に関する日本の意見を、官民共同で省庁横断的に迅速に取りまとめるとともに、ISO、ITU等の標準化活動への人材派遣や民間への支援を行う必要がある。

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