第20回評議員懇談会(座長 那須 翔 評議員会議長)/3月25日
評議員懇談会を開催し、税制抜本改革のあり方、地球温暖化問題への対応など、当面する重要課題について、経団連の取組みを報告するとともに、出席した評議員とテーマごとに種々懇談した。
わが国経済は昨年の4−6月期から3期連続で実質GDPがマイナス成長を記録するなど、大変厳しい状況が続いている。輸出の下げ止まりや在庫調整の進展など、明るい兆しも見え始めているものの、実態面では、雇用や所得環境の厳しさから消費は依然として弱い動きになっている。
わが国経済を本格的に再生させるためには、官民が構造改革を進め、海外ではグローバル化、国内では少子高齢化などの環境変化に柔軟に対応できる、活力溢れる経済社会システムを構築する以外に道はない。
構造改革は経済の需要面と供給面の両方で進めなければ充分な効果をあげることはできない。需要面では、企業が消費者のニーズに見合った新商品やサービスを開発していくことが重要であり、供給面では、経済全体の生産性の向上が不可欠である。
これまで税制の基本は、公平、中立、簡素と言われていたが、今こそ税制を個人や企業の活力を引き出し、経済を活性化させるための政策手段として、積極的に活用するという視点が重要である。また、欧米、アジア各国との競争に打ち勝っていけるように国際的に遜色のない税制とすること、少子高齢化時代にあっても十分に持続可能な税制とすること、が必要である。
税制改革の課題は多岐にわたるが、まずは、贈与税の軽減、住宅投資減税等デフレ・スパイラル脱却のために必要な緊急措置、次いで、企業税制改革を中心とした経済活力強化のための抜本的課題、さらには財政のプライマリー・バランスの回復を視野に入れた長期的課題、というように手順とスケジュールを明確にして、計画的かつ総合的に改革を進めていく必要がある。
さる3月19日、政府の地球温暖化対策推進本部において、地球温暖化対策推進大綱の改正が決定され、経団連が主張してきた自主的な取組みの尊重が受け入れられた。
しかしながら、次のような問題が残されている。第1は、そもそも京都議定書の数値目標は、具体的な対策がないまま、政治的妥協の結果、導入されたということであり、第2は、その目標遵守についての法的拘束力の有無に関し、見通しが不透明なことである。今後、温暖化対策に関する米国の提案と京都議定書とを一体化させた国際的枠組みを構築すべく、わが国政府はリーダーシップを発揮し、米国、欧州双方に働きかけるべきである。また、シンク(森林等のCO2吸収源)や京都メカニズムを充分に活用するとともに、民生・運輸部門における排出量の抑制、国民の生活様式の抜本的な改革が求められる。経団連ではこれらの課題の解決に向け取り組んでいく。
国際的な都市間競争が激化する中で、経団連はわが国の都市環境の低下を指摘し、都市再生を図ることがわが国経済の再生にもつながると主張してきた。こうした取組みを受け、政府では、昨年5月に総理を本部長とする都市再生本部を発足させて、民間投資への誘発効果の高いものや土地の流動化に資するものを「都市再生プロジェクト」として決定した。また集中的・戦略的に資金やノウハウなどの民間の力を振り向けるための措置を規定した「都市再生特別措置法」が今国会での成立を目指して上程されている。
今後は同法案の成立によって民間投資が誘発され、魅力ある都市づくりが形成されるよう、同法案の政令やその運用を実効あるものにすべく、取り組んでいく。
経団連では、昨年6月、わが国政府が長期的に追求すべき通商政策のグランドデザインを提示し、とりわけWTO新ラウンド交渉の推進とともに、二国間・地域協定にも積極的に取り組むべきこと、また通商政策と不可分のものとして、農政改革を含む国内の構造改革を進めることを強調した。
新ラウンドについて、わが国経済界としては、
二国間・地域協定については、中長期的にわが国製造業の生産ネットワークの基盤であるASEAN諸国、中国及び韓国との東アジア経済圏が確立されることを望んでいる。本年1月のシンガポールとの経済連携協定に続き、韓国、メキシコとの協定の早期締結を訴えていきたい。
本フォーラムは、企業人の政治への関心を高めるとともに、経済界と政治とのコミュニケーション強化を目的としている。
昨今、政策決定の重心が政治にシフトしつつある中で、経済界の要望を実現するためには、政治への働きかけがますます重要になってきている。このような観点から、同フォーラムでは、