経団連くりっぷ No.169 (2002年4月25日)

WTOサービス自由化交渉に関する懇談会(司会 團野廣一 貿易投資委員会総合政策部会長)/4月3日

リクエスト・オファー交渉に向けて各国が準備を加速化

−WTOサービス貿易交渉の最近の動き


WTOサービス貿易交渉の一連の会合が3月中旬にジュネーブのWTO本部で行われた。そこで、外務省経済局国際機関第一課の下川真樹太室長より、交渉の進展状況について説明をきいた。

○ 下川室長説明要旨

  1. 概観
  2. サービス貿易理事会特別会合の議論に関しては、特段の進展は見られなかった。各国は、6月末のイニシャル・リクエスト提出のための準備に重点を置いており、リクエストを見てから具体的な議論を行う考えだ。二日半の特別会合のうち、1日は途上国が関心を持つ原則的な問題(サービス貿易の評価、自主的自由化、LLDC配慮のあり方等)に費やされた。一方で、非公式ベースでは、四極会合、各種フレンズ会合が開催され、各国のリクエスト準備状況について活発な意見交換が行われた。日本が参加したフレンズ会合は、エネルギー、電気通信、コンピュータ、オーディオ・ビジュアル、郵便・クーリエ、海運である。

  3. 主な分野の動き
    1. 航空:
      EC、ニュージーランド、豪州はGATS適用対象の拡大を目指している。これに対して日本、米国、ブラジル、カナダは、航空自由化はシカゴ体制の下で行っていくべきとの立場である。ECはGATSの範囲が広がることを前提として広範な航空分野リクエストを作成する旨表明している。

    2. 海運:
      海運フレンズ会合が行われた。わが国が非公式に提案している改訂モデル約束表について協議した。

    3. 法律サービス:
      特別会合において、法律サービスの豪州案について議論が行われた。同提案では、資格法と活動の種類(免許の種類、活動の種類・度合い、領域等)によって法律のサービス分類を8から10に細分化すべきというものである。

    4. 教育:
      特別会合において、わが国から教育サービス自由化への期待と留意すべき事項を述べた交渉提案を提出した。

    5. エネルギー:
      特別会合では、分類の明確化に関し賛否両論あった。エネルギーの分類に関するワークショップをベネズエラが主催し、石油、電気、ガスの流通、販売が分類上どこに入るか、新たにどのように分類するか等について議論が行われた。エンロンの破綻は、表向きには米国の交渉姿勢に影響を与えていない。米国は、引き続き自由化を推進していくと表明している。

    6. 電子商取引関連:
      「コンピュータ・フレンズ」、「オーディオビジュアル・フレンズ」、「電気通信フレンズ」がそれぞれの切り口から電子商取引について議論を行った。インターネットをどの分野に分類するかについては、結論は出ていない。各国がリクエストでそれぞれに有利な分類を用いて交渉していくことになるのではないか。


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