経団連くりっぷ No.169 (2002年4月25日)

ISO CR規格の動向に関する会合/4月1日

ISO CR規格はマネジメント・システム志向であるべき


経団連および海外事業活動関連協議会(CBCC)では、3月29日に続き標記会合を開催し、ISO CR規格に対するわが国の対応方針を検討するために日本規格協会に設置された「企業の社会的責任ワーキンググループ」の主査を務めている麗澤大学国際経済学部の高 巖 教授を招き、同教授のISO CR規格の捉え方を中心に説明をきくとともに懇談した。

○ 高教授説明要旨

  1. ISO CR規格に関する考え
  2. ISO CR規格が策定されることになれば、その中には法令遵守、消費者保護、環境保護、労働、安全衛生、腐敗防止、人権、地域投資、地域貢献等が含まれると考えられる。しかしながら、環境に関してはISO14000sがあるため、含むべきか否かについては議論もあるだろう。

  3. ISO COPOLCO GMWGの模様
  4. 2002年3月7日〜8日に開催された消費者政策委員会(COPOLCO)下のグローバル市場ワーキンググループ(GMWG)に出席したが、その場で「われわれはISOの歴史の中で、企業が、自らの競争力という視点から、使用すべき規格を選ぶという、全く新たな段階に入ろうとしている」との宣言を報告書に明記して欲しいと主張した。これは、企業は全ての規格を取得するのではなく、自社の競争力の向上に資する規格を選別した上で、その規格を取得すべきとの考えに基づく。

  5. ECS2000に基づく経験から
  6. 麗澤大学企業倫理研究センターにおける「倫理法遵守マネジメント・システム規格」(ECS2000)の作成責任者を務めた経験から、ISO CR規格のあり方に関して以下の二点を指摘したい。

    第1に、ISO CR規格はマネジメント・システム規格的なものであること。その理由として、

    1. 各文化、社会、地域は異なる社会選好を持つこと、
    2. 各組織は構造的に異なる特徴を持つこと、
    3. 規格は競争力を促すものでなければならないこと
      (一方的に遵守すべき項目を規定すれば、企業はそれぞれのコミュニティが求めている事項を追求しないかもしれないし、また逆にコミュニティが求めていないことまで無理に強要するかもしれない。この意味で、一方的な規定は競争力を阻害する可能性がある)、
    4. ISO環境規格の成功に学ぶべきこと、
    があげられる。ただし、果たすべき企業責任の具体的事項を自ら決定できるとしても、その事項は広く公表しなければならない。

    第2に、倫理法令遵守には特に重きをおくべきこと。その理由は、

    1. 文言のみならず精神を守っていく、という意味での倫理法令遵守概念は、企業責任のほとんどの問題を網羅する。
    2. 社会貢献などの積極面だけを重視すると、企業も、ISOも非常に大きなリスクを抱え込んでしまう。例えば、どんなに多額の寄付を行っても、その原資が不法行為によるものであれば、貢献行為は単なる偽善となってしまう。また偽善行為に対して認証を与えれば、ISOそのものが信頼性を大きく損ねてしまう。


くりっぷ No.169 目次日本語のホームページ