資源・エネルギー対策委員会企画部会(部会長 石井 保氏)/3月28日
資源・エネルギー対策委員会企画部会では、電気事業経営、特に海外の事例研究についての研究者である電力中央研究所の 矢島 正之 研究参事を招き、海外における電力分野の自由化について説明をきいた。
わが国では2000年に大口需要家向けの電力小売自由化がスタートした。現在、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会では、自由化による価格低減効果や諸外国の動きを踏まえて、全面自由化の可能性、取引所設立の可否、発送電分離の可否、託送料金水準などが議論されている。
発電、送電、配電、小売という電気事業の諸機能のうち、発電はEUの全ての加盟国で自由化されている。電気事業のコストの約半分が発電なので、ここでの競争を活性化させなければ自由化の実はあがらない。
送配電は自然独占であると考えられており、内部相互補助の防止のためには競争分野からの分離が必要となる。これには会計上の分離、子会社化、第三者への売却などの方法がある。EUでは会計上の分離が要求されている。
小売は、TPA(第三者アクセス、日本でいう小売託送)では発電と同一の主体が担う場合があるが、かつて英国が採用していた強制プールのように発電と小売が分離されるモデルもある。EUでは小国を除くほとんどの国でTPAと任意プールとが組み合わされている。
EUは加盟国に対し、2003年までに小売の33%の開放を義務付けている。欧州では電源に余裕があり、系統がメッシュ状で系統制約が少ないなどの背景もあって、EU委員会はさらなる自由化を検討している。
米国でもEUと同様に自由化が進められてきたが、対照的に、1992年の卸自由化以降大容量の長距離送電が増えたことで系統連携の脆弱性が露呈し、2000年にはカリフォルニア電力危機が発生した。
電力危機の原因を小売価格規制に置く見方がある。しかし、規制がなかったSDG&E社の地域では、小売価格が2〜4倍に高騰し、主として低所得者がしわ寄せを受けた。つまり、卸価格が5〜10倍に高騰したことが危機の本質であった。
電力危機の教訓として、競争が機能するためには十分な発電・送電能力が不可欠であると考えられるようになった。とりわけ送電設備をいかに整備するかは議論の的になっている。ISO(独立系統運用者)は資産を所有していないため主体的な投資はできない。送電会社については、混雑の発生によって混雑料金が得られるので投資インセンティブが働かないという意見がある。
また、取引所への全面的な依存は意図的な価格吊り上げを招くおそれがあり、相対取引を重視すべきであると言われるようになった。すなわち、垂直統合だけでなく水平的な規模拡大も市場支配力の源泉となることが認識されるようになった。
電力危機以降、米国でもエネルギーセキュリティに対する懸念が高まり、「国家エネルギー戦略」で原子力開発の促進がうたわれた。原発の1940年から1960年への再ライセンス、原子力規制委員会の許認可の簡素化が実施される予定である。
原子力には次のようなリスクがある。