実行と前進の年

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豊田 章一郎 経団連会長


あけましておめでとうございます。
昨年の日本経済は、長期の景気低迷から脱する兆しを示すとともに、規制緩和をはじめとする構造的な変革に向けて、その第一歩を踏み出しました。政治の面においても、新しい選挙制度が成立して、改革が1つの区切りを迎えました。また、国連の活動における役割など、日本の国際社会への貢献のあり方が、さらに具体的な形で議論されるようになっています。

このように、昨年は日本が変革を通じて活力のある経済社会を創造するとともに、世界の平和と繁栄にも役割を果たしていくためのさまざまな課題が提示され、そのコンセンサスが、広く国民の間に形成され始めた年であったように思います。

しかしながら、こうした変革と創造への道のりは、いずれも未だ緒についたばかりであり、克服すべきさまざまな困難もあります。本年は、それらを乗り越え、具体的な成果の実現に向けて、1つひとつ着実に実行していく年にしなければなりません。

経団連は、そうした変革と創造の担い手として、産業界が自らなすべきことを提示して、それを実現すべく果敢に行動していきたいと思います。そのため、活動の基本としたい考え方が2つあります。

1つは、画期的な技術、アイデアを開発して、新しい産業・事業、新しい市場を創り出し、日本経済が再び活力を取り戻すようにリードする役割を果たす事です。
もう1つは、米国、欧州、東アジアなど、海外諸国とのより建設的な経済関係の構築に貢献することです。

このような考え方に立って、重点的に取り組みたいと考えている課題の第1は、やはり規制緩和の推進です。本年は特に、産業界自らが痛みを乗り越え、規制緩和のメリットが国民の目に見えてくるような活動をしていきたいと思います。

第2は、新しい産業や技術を生み出す創造性に富んだ人材の育成です。とりわけ産業・企業として自ら何をするのか、という視点から取り組むことが重要であります。

第3は、建設的な対外関係の構築です。昨年は、ビジネス・ラウンドテーブルなど、米国の経済界との新たな対話を行いましたが、本年は、これを継続・充実させるとともに、こうした対話を欧州やアジア諸国などにも広げていきたいと思っています。

これらは、今までも強調し取り組んできたことですが、本年は、具体的な成果を目指して、さらに前進させたいと思います。

昨年11月の本誌巻頭言で、日本経済にはいろいろな意味での”空洞化”の懸念があり、このままでは日本は活力を失いかねないと申し上げました。しかし、決して日本経済の将来を悲観しているわけではありません。危機感をバネとして、日本経済の明るい未来を描き、その実現を目指して1つひとつ問題を解決していく。そうした姿勢で本年の活動に取り組みたいと思います。

21世紀の豊かで活力のある経済社会を創造するという目標に向かって、信念と気概を持って行動するならば、道は拓けることでしょう。この1年を、変革に向けて着実に実行し、前進する明るい年にするよう、新たな気持ちで邁進したいと思います。(とよだ しょういちろう)


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