地方分権への期待

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三田 勝茂 経団連副会長


昨年11月は、政治改革、税制改革、地方分権といった平成の大改革にとって、ひとつの節目であった。前二者については国会で改正法が成立し、地方分権については既に9月に地方6団体の地方分権推進委員会が提言し、11月には閣僚も加わった行革推進本部の地方分権部会と首相の諮問機関である地方制度調査会が意見の取りまとめを行なった。

こうした改革の理由にはいろいろあるが、その第1は日本の経済社会の成熟化である。
生活水準が上昇すれば、「企業」や「お上」から押しつけられたものよりも、自律性や多様性のある価値観が強まってくる。消費のことも地域のことも、それを買う人やそこに住む人が一番分かっているのである。
われわれ企業人がCS(消費者満足)を重視するのはそれゆえであり、地方分権もCSに土台を置くべきなのである。

第2の理由は、わが国が国内的にも国際的にも大きな転換期にあることである。
国内的には“How to”の時代から“What to”の時代となった。 企業は「横並び戦略」ではなく「これこそ自社製品」といえる自主性あるものを生み出さねばならない。
国際的には、ボスニアで活躍する明石国連事務総長特別代表の、「冷戦後の社会では違いを尊重しなければやっていけません。共産社会と自由主義陣営 という2つの色分け時代が終わり、多彩な世界になったのですから」という言葉が、けだし至言である。 そして「違いの尊重」とは、「違いの自覚」と「違いへの寛容」から成り立つ。それは国家間でも、人種・民族間でも重要なことはいうまでもなく、ひとつの国をとってみれば、その国の地域と地域の間でも同じである。
結局、企業の自主性と同様、地方分権は、国の中で多彩な地方像の可能性を高めるものとして重要である。明石氏の言葉は、その意味で時代変化の本質を洞察している。わが国は地方分権による「内なる多彩化」、国際化による「外なる多彩化」に適応すべき段階を迎えているといえる。

それにしては地方分権への総論賛成・各論反対は困ったものだと思う。 こういう情況を早く打破して、地方分権に積極的に取り組んでもらいたいものである。 (みた かつしげ)


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