齋藤 裕
経団連評議員会議長
最近かなりの数の国会議員から、小選挙区制に切り換えたことを後悔する発言が聞かれる。当時、政治改革とは選挙制度改正のことかと思われるほどこの問題に集中した国会議員が、自らの手により圧倒的多数でこの小選挙区制を可決した時には、すぐにも新制度による選挙が行われるものと期待された。にもかかわらず、今日に至るまでその実現が見られぬのみならず、与党の中では社会民主党や新党さきがけが総選挙の先送りに懸命である。また自民党の中でも解散を秋以降と望む向きが多いように、早期の選挙に対する取り組みに極めて消極的であるように見受けられる。
景気回復のための予算審議という問題は考えねばならぬとしても、この秋以降とか、極端なものでは来年の任期いっぱいまで総選挙を引き延ばそうとする姿勢は、党利・党略のためには議員にとって最も肝心な国民の信を問う考えの薄いことを示すものといわれても仕方あるまいと思う。
われわれが国会議員に敬意を表するのは選挙で勝ったいわゆる選良であるからであり、議員が選挙を嫌って、その間、われわれが十分には納得し難い政治が長々と行われるようなことでは、もはや民主政治とはいえなくなると思う。
もちろん今度の総選挙は制度改正後の初の選挙であり、結果の予測は難しく、各政党にとりまた選挙民にとり、満足のゆく結果が出るとは限らない。しかし如何なる結果が出ようとも、それが民意によるものとなれば今の日本の閉塞感のかなりのものを打ち払うことになると思われる。われわれが可及的速やかな解散総選挙を求める所以である。
(さいとう ひろし)