新たな産学関係の創造

久米 豊
経団連副会長


科学技術基本法が成立し、これから政府によって基本計画が策定される。それに基づいて予算の面でも、96(平成8)年度に引き続いて、97(平成9)年度も大幅な増額を期待したい。

政府予算の増額を歓迎する理由は、それによって大学における創造的な基礎研究を行う環境を、積極的に整えるべきだと思うからである。日本全体の研究開発費の80%は民間の拠出であるが、これでは日本の将来にとって重要な基礎研究が、景気によって左右される恐れがある。それを支えるのが大学や公共の研究機関であるが、劣悪な研究環境や乏しい研究予算では、多くを望めないのが現状である。

産学の協同体制も重要である。現代は研究開発の内容が広範かつ高度なものとなって、企業が単独ですべての分野をカバーできなくなっている。したがって産と学でテーマを共有し、連携をとることが有効である。あわせて必要な制度の改革を要望したい。

これまで産学協同の必要性を認めながら、なかなか研究目的を絞り込んで成果をあげることができなかった理由として、大学の研究環境の不備、制度上の制約、産学の給与格差などによる人材交流の阻害などのほかに、産学相互の考え方の違いがあげられている。産学協同とは大学が企業の下請けになることではなく、それぞれが独自性を保ちながら相互補完的な協同をするのが理想である。これには難しい点もあるが、今後経験を積むとともに、制度やシステムを改革してゆくことで解決できよう。健全な産学協同関係の構築は、日本の将来にとってきわめて重要な命題である。

また現代は地球規模の問題が増加し、問題自体も複雑化している。人口爆発と食糧危機の解決、エネルギーの安定供給と環境の保全、保健医療の充実など、どれひとつをとっても人類の未来のためにすべての社会や国が直面している問題である。したがってこの解決のためには、国境を越えて相互協力する必要がある。今後国際的な産産、産学、学学の協力をいっそう発展させてゆきたいものである。

(くめ ゆたか)


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