首都機能の移転を梃子に
構造改革の推進を

豊田 章一郎
経団連会長


経団連は本年始め、日本経済の長期ビジョン「魅力ある日本--創造への責任」を発表いたしました。その中で、新しい日本を創造するための「プログラム2010」を提唱しておりますが、特に重要なプロジェクトとして「新首都を建設し、新しい分権型国家システムを構築する」ことを掲げております。

首都機能の移転については、昨年末に国会等移転調査会の最終報告がとりまとめられ、今国会に移転先の調査・選定機関の設置に関する法案が提出されるなど、実現に向けて前進しつつあります。また、各地でシンポジウムが開催されるなど、国民の意識も次第に盛り上がりつつあるように思います。

首都機能移転の必要性は、かねてから東京一極集中の是正や都市防災の観点などから論じられてきました。それはその通りであります。しかしながら、今やそれだけにとどまらず、首都機能の移転を通じて、日本経済の構造改革を促進して、日本の人心を一新するという、さらに積極的なねらいを持ったプロジェクトとして位置づけ、推進してゆくのがよいのではないかと思います。

日本は今、自己責任原則が徹底し創造性や個性に溢れた経済社会の実現を目指して、規制緩和、地方分権、行政組織の改革、さらには新しい社会資本の整備など、さまざまな課題に取り組んでいます。これらは、それぞれが密接に関連する政策課題であり、一体的、有機的に推進する必要があります。そして、それぞれの政策が実現されると日々の生活が具体的にどうよくなるのかということを、国民に分かりやすく示してゆくべきであると思います。首都機能の移転は物理的な移動をともなう具体的なプロジェクトであり、目に見える形で変革を実現する絶好の手段となるように思います。

経団連としては、ビジョンの実現に向けて首都機能移転の取り組みを強化するとともに、これを梃子とした構造改革をいっそう強力に推進してゆきたいと思います。

(とよだ しょういちろう)


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