今なら間に合う
―豊かな長寿社会づくりにむけて―

伊藤 助成
経団連副会長


わが国は、21世紀に世界でも類のない高齢化社会に突入する。長寿をみんなで喜びあえる、活力ある経済社会を是非とも実現しなければならない。

一方、わが国の財政は、構造改革を怠ったツケが来て、約440兆円の多額の債務を抱えるという危機的状況に陥り、財政再建は待ったなしの状況にある。

今こそ、日本の将来を見据え、行政改革・規制緩和とともに本腰を入れて財政構造改革に取り組まなければならない。そのための方策は三つに凝縮される。

一つは、日本経済の活力を維持するために、国民負担率の上昇を抑制することである。国民負担率の上昇が経済成長率を引き下げ、それがまた国民負担率の上昇につながる悪循環を断ち切らなければならない。二つ目は、歳出の効率化を行なう中で、高齢化社会に向けての社会資本・システム整備を戦略的・重点的に展開していくことである。そして最後は、財政再建の長期目標を定め、その健全化に取り組むことだ。官民及び、行政における中央と地方の役割分担、財政投融資制度のあり方等を明確にする中で、聖域を設けず徹底的な効率化を行なうことがその大前提となろう。

こうした取り組みにより、21世紀の日本を明るく住みやすい長寿社会とすることは可能である。幸い、日本はまだ、第1次ベビーブーマーズ約700万人が現役で活躍しており、第2次ベビーブーマーズ約800万人もこれから活躍しようとしている時期にある。

高齢化がピークを迎える前の10〜15年の間に、未来のための社会資本整備と、国民負担率の抑制、財政構造改革の実施を通じて、世界に範たる長寿社会をみんなで創っていきたいものだ。

「今なら間に合う、明日では遅い」のである。

(いとう じょせい)


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