月刊keidanren 1997年 2月号 巻頭言

誠実を支えるディスクローズ

北岡副会長

北岡 隆
経団連副会長


 企業活動を見つめる社会の目が一段と厳しさを加えている。企業の影響力が大きくなっており、また、海外では文化・慣習の違いも加わって厳しさを加速している。企業の果たす役割および社会の人々の期待を自覚し、企業活動の及ぼす影響の大きさを見据え経営にあたらなければならないと自戒している。

 現在、メガコンペティションが進行しているが、この世界的な大競争を活性化させ、発展させるためによりどころとなるのが、フェアな精神に裏うちされた行動である。フェアな視点、フェアであることが信頼を生み、共通の土俵で事業を進める参加資格となる。このフェアな行動を促す原点は、誠実さだと私は考えている。誠実というのはウソをつかないこと、信頼を裏切らないということだ。誠実さを社員一人ひとりの心の中に根付かせることがフェアな行動を徹底し確実なものにする。フェアで誠実な体質づくりに企業グループ約11万人が取り組んでいるが、一分の隙もない体制を築くため繰り返し繰り返し持続的に周知・見直しを行ない、常に自分を律し経営にあたることを怠ってはならないと考えている。

 このフェアで誠実な風土づくりに必須なこととして、常に外に目を向け社会の人々との間に目線のズレを生じさせないこと、それとオープンな姿勢、ディスクローズの徹底ということを考えている。特にディスクローズを推進し、透明度を高めることが大切だ。経営数値のディスクローズはもとより、経営の将来計画や課題・問題点など率直に社会に伝える「語る企業」になることが求められる。自分たちの考えや行動をはっきりと、わかりやすく見えるようにすること、そして、言ったことは必ず実行することが、フェアな姿勢を顕在化させ誠実を支え、信頼を育むと考えている。

(きたおか たかし)


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