月刊 keidanren 1997年11月号 巻頭言

環境大国

辻副会長

辻 義文
経団連副会長


本年12月に京都で地球温暖化防止条約・世界会議(COP3)が日本政府を議長国として開催されることになっており、CO2などの温室効果ガスによる地球温暖化の進行を如何に食い止めるかが話し合われる。本来、温室効果ガスは地球上の人や動植物が住みやすい環境を保つのに役立っているが、18世紀末からの産業活動の拡大によってCO2の濃度が次第に高まっており、21世紀中には地表温度の上昇等、地球環境に重大な悪影響が生じるといわれている。COP3では「2000年以降のCO2等温室効果ガスの削減目標」について話し合うことになっている。今、世界的な考えどころは「経済成長に悪影響を及ぼさないで、しかも実質的に効果のある削減目標が設定できるかどうか」にかかっている。

わが国の「2010年における1990年対比の温室効果ガス試算値」がいくつかの研究機関から発表されており、それらは大方次のように指摘している。

  1. 現状のままではCO2排出量が全体で20〜30%増加する。
  2. 産業活動からの増加は少ないが、運輸・民生では大幅な増加となる。
  3. 官と民とが協力して強力な対応をすることで全体としては削減が可能で、この成否は原子力発電の推進等を含む産業界の一層の努力と、民生における住環境、家電製品、コンピュータ等の更なる省エネ化、運輸における省エネ車の開発・普及や物流、交通流の改善等、そして全般的には個人個人のこの問題に対する認識の度合いにかかっている。

わが国は良い意味でも悪い意味でも、20世紀は「経済大国」といわれたが、21世紀は「環境大国」といわれる国になりたいものだし、政府も12月の会議で全世界の環境に対する方向づけができるよう、指導力を是非とも発揮してもらいたい。

(つじ よしふみ)


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