月刊 keidanren 1997年12月号 巻頭言

合理的な土地・住宅政策の好機

前田副議長

前田又兵衞
経団連評議員会副議長


景気の停滞感が強まりつつある中、与野党では、各々の経済対策の策定作業を急いでいる。

今回の経済対策は、構造改革の推進と両立させることが前提となるだけに、具体策の取りまとめにあたっては従来とは違った難しさがあるようだ。

しかし、現在までに伝えられている対策の方向を見ると、構造改革の面からはずみをつけるものとなっており、大変喜ばしい。

特に、対策の柱の一つとして「土地の流動化」があげられていることは、企業経営の足かせとなっている不良債権問題の解消に資するとともに、土地の有効利用を進展させる大きな契機になるものと高く評価したい。

すでに政府は、地価抑制から土地の有効利用へと土地政策の転換方針を明らかにしているが、土地の有効利用を図るためには、次の3点が重要であろう。

まず第1は、政府の強い意思表明である。
政策を成し遂げようとする強い意思を公表すれば、さまざまな知恵や工夫が湧き出てくるだろうし、関係者の積極的な協力を得やすくなる。

第2は、土地利用とグランドデザインの整合である。
土地の有効利用としてどのような方向を目指すべきかについてグランドデザインを描き、目標達成に向けたプログラムを提示することである。

第3は、合理的な土地・住宅政策の立案である。
土地に関わる税制あるいは各種規制は、時代の変化に応じたスクラップアンドビルドを行なうべきである。

いずれにしても、土地・住宅政策のあり方は、21世紀の活力ある経済社会を築く鍵となるものであるから、検討の時間的な猶予は多くは残されていない。

この際、土地・住宅政策全般についての見直しを行なう好機として、継続的な取組みと大胆な英断が政府に求められる。

(まえだ またべえ)


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