月刊 keidanren 1998年 6月号 巻頭言

構造改革の加速と 国際標準に合致した制度の整備

経団連会長就任にあたって

今井会長 今井 敬
(いまい たかし)
経団連会長

 私は、5月26日を以て経団連会長に就任致しました。

 豊田前会長が築かれた路線を継承し、「実行する経団連」を旗印に、直面する重要課題に着実、タイムリーに取り組むことにより、魅力ある日本の創造に全力を傾注してまいる覚悟であります。

 何よりも先ず実現すべきは、一刻も早いわが国の景気回復と、閉塞感を打破して、明るい将来を切り拓くための基盤構築です。このため経済、行財政、年金等の構造改革を加速すると同時に、グローバルスタンダードに合致した諸制度の整備を急がねばなりません。

 その上で、私どもが取り組むべき第1の課題は、金融システムの安定化です。30兆円の公的資金投入による不良債権の処理・金融システムの再編成、金融ビッグバンの前倒し実行、円の国際化を講じることにより、市場の信任を回復する必要があります。

 第2の課題は、抜本的な税制改革です。個人の意欲の減退、国内企業の海外移転、海外企業のジャパンパッシングが生じないよう、所得税の抜本改革、法人実効税率の引下げ、連結納税制度の導入等を、強く政府に働きかけていく所存です。

 第3の課題は、産業基盤の強化です。資源やエネルギーの大半を海外に依存するわが国が、均衡のとれた産業発展と豊かな国民生活の実現を、今後も享受するためには、規制撤廃による高コスト構造の是正とともに、産業基盤、なかんずく優れた技術力の堅持が肝要です。このような観点から、「科学技術立国・日本」を目指して、様々な産業技術の課題を、産・官・学一体となって具現化すべきと考えます。

 現下の経済情勢は、誠に厳しいものの、私は、企業が企業倫理を徹底し、自ら進んで革新を遂げると同時に、経済界一体の叡知を結集すれば、必ず明るい将来を切り拓ける、またこのことが世界の繁栄にも直結すると確信致しております。

 私は、諸課題に正面から取り組むことによって、責任を全うしていく覚悟であります。何卒皆様方のご理解と、ご支援を心よりお願い申し上げます。


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