月刊 keidanren 1998年 9月号 巻頭言

国際競争力強化に向けた戦略的産業技術政策の確立を

金井副会長 金井 務
(かない つとむ)

経団連副会長
日立製作所社長

わが国経済は、1997年度の実質GDPがマイナス成長になる等、戦後最悪の不況に入っております。こうした状況を打破していくには、基本に立ち返り、正面から取り組むことが最も重要かつ近道であります。したがって、現下の日本の構造改革こそ早急に取り組み、実施していかねばならないことであると思います。すなわち、経団連の総会決議では「金融システムの安定化」や「抜本的な税制改革」そして「産業基盤の強化」を最重要課題であるとしています。

産業技術委員会の委員長を仰せつかっております私の立場から申し上げますと、「産業基盤の強化」、なかんずく「優れた技術力の維持・強化」が最大の課題であると考えております。しかしながら、この問題は単に科学技術の振興を図るということではなく、より広い視野から捉える必要があると思います。すなわち、大競争時代に入っている現状では、「国際競争力の強化」という観点が欠かせません。これには、産業技術政策だけでなく、より広く産業政策、あるいは規制緩和や税制を含めた経済政策、さらに労働や教育分野などの社会政策も関わってきます。

米国経済の国際競争力は90年代初頭に復活した後、さらに情報化戦略で他国との差を開こうとしています。これは、80年代から国をあげて国際競争力強化策を進めてきた成果だと考えております。現在、日本はグローバル・スタンダードを踏まえた構造改革に力を注いでおりますが、これからはさらに、国際競争力強化に向けた戦略性をもった政策を指向していく必要があると思います。

特に、産業技術強化の最重要戦略の一つは、教育改革だと思います。10年後、20年後の競争力は、今、初等・中等教育を受けている人達が担うことになります。また、高等教育も大学生だけでなく、社会人の方々にとっても重要性は増しています。産業技術の国際競争力強化は、こうした観点から、各委員会と連携を取りながら、戦略性をもって取り組んでいきたいと思います。


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