月刊 keidanren 1998年11月号 巻頭言

行政改革に期待する

伊藤副会長 伊藤助成
(いとう じょせい)

経団連副会長
日本生命保険会長

中央省庁等改革推進本部が始動し、省庁再編の作業が進められている。政府にとって、景気回復が政策の第1優先課題であることは間違いないが、中長期的には、この行革が民間主導の自立型社会を構築できるかの試金石となる。不退転の決意でやりとげてほしい。

そもそもわが国では、戦後の経済復興や高度経済成長の過程の中で、社会保障の充実など、新たな行政需要を発生させ、政府の役割を拡大させてきた。しかし、社会が成熟化し安定成長の時代となるに及んで、肥大化・硬直化した行政組織は、非効率なサービスとも相まって、財政赤字の拡大やグローバルスタンダードへの対応の遅れ等を生み出し、新たな日本の発展の障害となっている。

このような「大きな政府」を見直す行革のポイントは3点ある。まず第1に、「小さな政府」の理念の下、政府の基本的役割を根本的に見直すことである。国の役割は、治安、防災、防衛、教育などに限定し、その他は民間の活力に極力委ねるべきである。外国の例でもニュージーランドの中央省庁再編において、国の事業・執行部門の多くが国有企業化・民営化され、経済全体が活性化された。

第2に、民営化の道筋をきちんとつけることである。今回の省庁再編作業の中でも、いくつかの独立行政法人の設立が予定されている。この独立行政法人を、例えばイギリスのエージェンシーのように、行政サービスの効率化・民営化の柱に据え、さらに行政の非効率の一つとも言われている現行の特殊法人全体の整理・見直しにつなげていくことが肝要である。

そして第3は、省庁再編作業を形骸化させないことである。目下進められている中央省庁再編は、数合わせの単なる看板のかけかえに終わるリスクもある。行政の簡素化・効率化、裁量行政からの脱却といった「質」の転換を伴うものとなるかどうか。各省庁設置法の実効ある見直しや国家公務員の定数削減など、今後の「仏に魂を入れる」作業に期待がかかる。

経営効率化のための民間企業のリストラと同様、官にあっても、国のあり方の見直しも含め、大胆なリストラは待ったなしである。


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