経営タイムス No.2635 (2002年6月27日)

第90回ILO総会閉幕

−協同組合促進勧告など採択


 第90回ILO総会は20日、すべての審議を完了し閉会した。今総会では、協同組合の促進に関する勧告、業務災害・職業病の記録および届出に関する議定書と職業病一覧に関する勧告が採択された。また、これまで採択された194の勧告の中で、採択当初の目的をすでに失っている20の勧告の撤回を決めた。各委員会・議題の主な討議結果は次のとおり。

●財政委員会

 米国政府の滞納金支払いにより生じた約5700万ドルの余剰金について、10%を財政規則に従って加盟国に返還、残りは緊急プロジェクトへ流用するとの事務局の提案を承認し、具体的な使途については、11月の理事会に調整権限を与えることとした。

●条約勧告適用委員会

 連合が、昨年12月に閣議決定された公務員制度改革大綱における官公部門労働者の組合権について提訴していた問題が、本委員会の個別審査の対象となった。委員会議長は、公務部門の労働者が給与決定に参加する機会が大幅に制約されていることに懸念を表明し、進行中の公務員制度改革について政府が関係者と十分協議するよう、また、引き続き進捗状況についてILOに報告することを求めるコメントを提出した。

●第4議題「協同組合の促進」(第2次討議)

 本議題は、1966年の「協同組合(発展途上国)勧告」(127号)を改正し、途上国のみならず市場経済国まで適用可能な普遍性を持たせ、時代に即したものにすることを目的としていた。賛成436票、反対0票、棄権3票で、36年ぶりに新勧告が採択された。
 新勧告は、前文において、協同組合の意義として仕事の創出、資源の結集、経済への貢献などを挙げている。本文は、協同組合の定義、目的、政策的枠組み、政府・労使団体・協同組合団体の役割などにわたって19項目からなるが、簡素で柔軟性のある文書となった。
 第2次討議に向けて使用者側は、協同組合への支援策は他の経済主体に対するものより有利にすることなく、同じ土俵での活動を確保することを主張した。結果としては、協同組合が「不利とならない条件で取り扱われるべき」という文言の前に「国内法令と慣行に従って」と挿入することで合意が得られた。

●第5議題「業務災害・職業病の記録及び届出及び職業病リスト」(1回討議)

 本議題は、1981年の「労働安全衛生条約」(155号、日本は未批准)を補足する文書について検討を行った。使用者側は、批准数の少ない同条約を補足する国際文書を議定書(条約と共に批准されると法的拘束力をもつ)とすることは問題とし、勧告の形式を主張、本会議での議定書採択に棄権票を投じた。結果は、賛成355票、反対1票、棄権81票で、議定書が採択された。職業病リストについては、賛成が大多数で勧告が採択された。
 使用者側は、また、通勤災害は業務災害に含めない、職業病リストは補償の対象として扱わないことなどを主張したが、新文書には反映されなかった。
 議定書は前文と7条からなり、「使用者による業務災害/職業病(疑いある場合を含む)の記録」「適切な情報の権限ある機関への提供」「予防措置のための統計の作成」などを定めている。
 勧告は、前文と6条および職業病リストで構成され、「ILO指針の尊重」「三者構成専門家会議による職業病リストの定期的見直し」などを内容とする。わが国では、これらの内容はおおむね既に具現化されており、大きな影響を及ぼすものではないと思われる。

●第6議題「ディーセント・ワークとインフォーマル・エコノミー」(一般討議)

 一般討議の本議題では、従来、社会的な認知が乏しく、労働者に対する保護も不十分であったインフォーマル・エコノミーについて、否定的な面の改善を進めつつ、その潜在的可能性について政労使および国際機関が支援していくべきとの趣旨の報告書が本会議で採択された。
 多くの途上国ではフォーマル経済で吸収しきれない雇用の受け皿としてインフォーマル経済が機能している。これらで働く人々は、税金や社会保険料も支払っていないが、その代わり社会保障制度の対象にもならず、脆弱な立場にある。教育訓練機会の不足、規制や高額な手続き費用がフォーマル経済への移行を阻止している。
 報告書は、インフォーマル経済で働く人々や企業に対して、さまざまな支援策の提供や規制緩和の推進などにより、労働条件の改善やフォーマル経済への移行を促すことを主張。この報告に基づいて、ILOは2004―5年の予算において、インフォーマル経済における労働条件改善プログラムを盛り込むべきとの決議が、本会議で同時に採択された。


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