経営タイムス No.2638 (2002年7月18日)

日本経団連、第1回起業フォーラム開催

−ベンチャー企業経営者、奥田会長らと意見交換


 日本経団連(奥田碩会長)は15日、東京・大手町の経団連会館で、「第1回起業フォーラム」を開催した。

 同フォーラムは、会員企業経営者とベンチャー企業経営者との情報・意見交換、人的交流を通じて、起業家精神の涵養と企業間連携の推進を図り、新産業・新事業を創出することが狙い。日本経団連会員ならびにベンチャー企業から約270名が参加した。

 冒頭、同フォーラム代表世話人の高原慶一朗氏(日本経団連評議員会副議長、新産業・新事業委員会委員長、ユニ・チャーム会長)が開会あいさつを行い、「このフォーラムは旧経団連が2000年から開催していた起業家懇談会を拡充・発展させたもの。先行き不透明な今こそ、時代を切り開くアントレプレナーの出現が待たれる。参加者が、共に高い目標を持ち、変革を求め啓発しながら新たなビジネスの形を探るため会合を重ねたい」と同フォーラム設置の経緯・理念を説いた。

 続いて、奥田会長があいさつに立ち「わが国は今、欧米を手本とすることなく、自ら発展の道を切り開く立場にある」と強調。こうした時代の中で、「リスクを恐れず事業を推進されているベンチャー企業の方々の多様な価値観にふれることができるのは大変有意義である。われわれに『カツ』を入れていただきたい」と述べた。

 続いて、堀紘一・ドリームインキュベータ社長の司会で奥田会長はじめ日本経団連首脳らとベンチャー企業経営者が意見を交換した。

心構えや経営課題で発言

 意見交換では、同フォーラム世話人のベンチャー企業経営者から、その心構えや経営上の課題について概要次のとおり発言があった。

 「初めから大手企業の下請けでよいと考えてはいけない」(伊藤穰一・ネオテニー社長)、「ベンチャー企業には成長の痛みが伴う。事業開発と組織開発のさじ加減が難しい」(石田宏樹・フリービット・ドットコム社長)、「ベンチャー経営者の課題は事業資金。資金が続かず力尽きるベンチャーが多い。大手企業に依存してはいけない。ハングリー精神をもつべきだ」(澤田秀雄・エイチ・アイ・エス社長)、「産業のコメといわれる半導体のビジネスモデルも大きく変化している。コメをチャーハンにしただけでは売れない。さらに付加価値をつけ、チャーハン定食にしないと売れない」(杉山尚志・リアルビジョン社長)、「家族主義的な経営のままか株式公開すべきか、悩んでいる」(田子みどり・コスモピア社長)。

 これに対し、同フォーラムアドバイザーである日本経団連首脳ならびに大手企業経営者からは、「ベンチャー企業は、大手企業の資源をもっと利用すべきだ。まずは大手の下請けでもいいと考え、知らず知らず座敷にあがる方法もある」(鳴門道郎・日本経団連新産業・新事業委員会企画部会長、富士通特命顧問)
 「私の会社ではベンチャーにプレッシャーをかけることはない。共に事業展開したいと思う。どしどし新しい技術を持ちこんでほしい。ただ、大手企業には厳しい選球眼がある。いい加減な技術では困る。常に提案型のベンチャー企業であるべきだ」(御手洗冨士夫・日本経団連副会長、キヤノン社長)
 「ベンチャーへの投資のポイントは、社会に役立つ製品を製造しているかなど。ベンチャー企業にかけているのは、販路である。本フォーラムで、大手との連携ができるとよい」(熊谷巧・日興キャピタル社長)
 「ベンチャー企業には優れた技術だけでなく、マネジメント面の能力も必要だ。経営者一人で技術開発も経営もこなすのは難しい」(奥田会長)
 「リーダーに必要なのは、初志を貫徹する執念と、日々、達成感を持つことである」(高原代表世話人)などの発言があった。

 意見交換では最後に、高原代表世話人が、「意見交換を通じ、大手企業・ベンチャー企業双方の求めるものが明らかになってきた。次回以降の会合では、この点を掘り下げたい」とあいさつ、会合を締めくくった。


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