経営タイムス No.2641 (2002年8月8日)

日本経団連・東富士夏季フォーラム

質疑応答


<日本経団連側>

わが国では、なぜ一段高いレベルの、思い切った国家戦略が出てこないのか。それには国民の危機意識の共有が必要であるが、経済財政諮問会議などの組織をどうバックアップしていけばよいか。

<吉川教授>

多くの国民は毎日の仕事に追われ、国の将来を考える暇がない。シンクタンクなどから政界入りして、自分の考えを実現できるような土壌をつくるべきだ。また、国民の経済に対する理解が低く、政治のリーダーを選ぶときに反映してしまう。私の主張する「マネー敗戦」という考え方も浸透しなかった。円・ドル問題は国の根幹に関わる問題であり、国民共通の理解としていく必要がある。

<日本経団連側>

中国のマーケットはまだ小さい。日本経済はアメリカ抜きでも大丈夫だろうか。また、国の競争力を高めるコスト体制を形成するにはどうすればよいか。

<吉川教授>

アメリカの対外純債務を考えると、どうしても長期的にはドルが下がる。下がるのを防止するには日本の円をどんどん外に出さねばならない。
日本もアメリカのように、個々の研究者の考えを政治家が吸収するシステムにすれば戦略性を備えられると思う。過度な円高が高コスト体質をつくり出しており、この改善には規制改革は効かない。日中の連携については、将来を考えて手を取り合うべきであるが、米ドル中心の世界が続き、「マネー敗戦」の構造から脱せなければ、日本は損をし続ける。

<日本経団連側>

日本では個人資産があるのに、なぜ株式市場に金が入ってこないのか。

<吉川教授>

本来、顧客とともに財産を形成していくはずである証券会社の仕組みに問題がある。大口重視の体制を変えなくてはならない。
株式市場は日本経済を動かす大動脈であるという認識のもと、個人投資家が安心して参加できるようにするべきである。


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