経営タイムス No.2645 (2002年9月12日)

第50回北海道経済懇談会開く

−日本経団連と道経連が共催


日本経済団体連合会(日本経団連、奥田碩会長)と北海道経済連合会(道経連、泉誠二会長)の共催による「第50回北海道経済懇談会」が5日、札幌市の札幌グランドホテルで開催された。懇談会には奥田会長、泉会長はじめ両連合会の首脳のほか道経連会員など200名が参加し、豊かな日本の創造と北海道の経済再生に向けて」をテーマに意見を交換した。冒頭あいさつで奥田会長は、来年度の税制改正について「日本経団連としては、法人課税の軽減を中心とする大規模な先行減税の実現を求めていく」と強調した。懇談会では、日本経団連首脳6氏から「当面の経済運営と税制改革」など当面する諸課題や取り組み状況が説明されたほか、道経連副会長4氏から、「北海道経済の現状と課題」「産業新生への取り組み」などについて発言があった。

奥田会長「先行減税実現」を強調

冒頭、開会あいさつで泉道経連会長は、北海道経済の現状にふれ「今年度も道内のGDPはマイナスで推移すると予測される。建設業を中心とする倒産が続き、雇用問題が深刻な問題である」と説明。こうした情勢を打開するため、「当会では産業の育成と強化に努めている。産学官の連携により比較優位性のある食・住・遊の産業を強化・拡充。次世代バイオテクノロジー分野にも焦点をあて、新産業・新事業の創出を図りたい」との考えを示した。
続いて、堀達也北海道知事の来賓あいさつののち、奥田日本経団連会長があいさつを行い、経済情勢や税制改革について所見を述べた。景気情勢については、「国内の設備投資や住宅投資は引き続き低迷している。雇用・所得環境の厳しさから消費も力強さに欠ける」として、先行きは「楽観は許されない状況にある」との認識を示した。
さらに、奥田会長は、最近の企業不祥事にふれ、「誠に残念なことだ。これを契機に、トップ自らが率先し、情報開示の充実や社内の倫理観の高揚を図るべきだ」と呼びかけた。
税制改革については、「民間活力を生み出す税制の整備が急務である。日本経団連としては、法人課税の軽減を中心とする大規模な先行減税の実現を求めていく」方針を明らかにした。

日本経団連首脳が当面の課題や取り組みを説明

引き続き懇談会に移り、まず、日本経団連から西室泰三副会長が、「当面の経済運営と税制改革」について説明。西室副会長は、「株式市場の変調が続いており、楽観できない景気情勢である。企業努力も必要だが、政府の施策が必要な局面に入ったといえる」と指摘。こうした中で「デフレからの脱却、経済活性化に向けた大規模な先行減税を含む税制改革への期待が高まっている」とした上で、「企業活性化のため、法人の実質税負担の軽減」を強く求めていくと述べた。
「今後の住宅政策に向けた取り組み」については、奥井功副会長が「第2次ベビーブーマーが住宅取得期にはいる今後10年間が、良質な住宅ストック形成の最後のチャンス。こうした観点から、日本経団連では住宅ローン利子所得控除制度の創設、賃貸住宅投資減税などの支援税制を提案してきた。来週にも、住宅税制も含め来年度税制改正に焦点を絞った提言をまとめ、政府与党に働きかけたい」と説明した。
続いて、「日本経団連の政治への取り組み」について前田又兵衞・企業人政治フォーラム会長代行が報告。この中で前田会長代行は、経済運営、税制改革などの経済界の意見を実現させるには、政治との関係をこれまで以上に強化し、ビジネスの現場の声を政治に反映させることが重要であるとして、「日本経団連では1996年に企業人政治フォーラムを設立。政治家との懇談会開催など活動の充実と会員拡大に努めている」ことを説明。その上で、より多くの会員の同フォーラムへの入会について理解・協力を要請した。
経済活性化策のひとつとして最近注目されている「構造改革特区構想の推進」については、香西昭夫副会長が、「自己責任原則に基づく、民主導のこの構想を大いに評価している。特に、北海道では、農業に関する特区の提案が多く、地元の熱意が強く感じられると」とした上で、「この構想は、自治体と企業が車の両輪として協力し、知恵を出し合い初めて実現する。地元の農業団体など関係者のコンセンサスが不可欠」と語った。
「技術開発の推進に向けた取り組み」については、柴田昌治副会長が、産学官連携による産業クラスター創造活動や次世代型産業技術の創出活動に取り組む道経連の取り組みに「大いに期待している」と表明。日本経団連も「技術開発の観点から企業の新技術創造などの環境整備に努めたい。その一環として、来る11月18日に第2回産学官連携サミットを開催する」と述べ、参加を呼びかけた。
最後に、槙原稔副会長が、わが国の通商政策をめぐる (1)WTOの新ラウンド交渉 (2)国際的な投資ルールの策定 (3)自由貿易協定について報告。WTOの新ラウンド交渉については、わが国経済界の意見を交渉に反映すべく、サービス貿易、鉱工業品の関税引き下げなど関心が高い分野の具体的な検討を進めていると、日本経団連の取り組みを紹介した。

北海道経済の現状などを説明

一方、道経連からは、我孫子健一副会長が「北海道経済の現状と課題」について、個人消費が、BSE問題などの影響により3年連続で対前年比マイナスで推移しているなど、北海道経済が非常に厳しい状況にあると報告。次いで北海道経済の課題として社会資本の整備を掲げ、具体的に道内高速道路の整備などを要望項目として挙げた。
続いて、林光繁副会長が「今後の住宅政策のあり方」に関する報告の中で、「雪氷エネルギー等新エネルギーの住宅への応用」が検討されていることを紹介。これは、雪や氷を必要な時期まで保存して冷熱源として利用する構想。「電気式冷房システムと比べ、設置費が割高なため、経済的な支援・補助といった制度が必要」として、日本経団連に理解・協力を求めた。
「産業新生への取り組み」については藤田恒郎副会長が、道経連が道内経済の自立的発展のため進めている「産業クラスター」創造活動などについて説明。産業クラスター活動は、5年目を迎え11件のプロジェクトが事業化され、道内25地域に研究会が設置されている現状が紹介された。
最後に、大森義弘副会長が「サハリン州との経済交流」について報告。道経連と道内民間企業が昨年4月、ユジノサハリンスク市に「北海道ビジネスセンター」を開設し、現地での入札や引き合い情報を道内企業に発信し、さらには合弁企業の照会に精力的に対応するなど、高い評価を受けているとの発言があった。
懇談ののち奥田会長は、「北海道経済の活性化に向け社会資本整備や雇用創出などの諸課題が残っていることを痛切に感じた」と印象を述べ、この解決には中央での諸制度の改廃、規制・税制改革の早急な実施が必要との見解を示した。
また、「住宅は21世紀の産業の中核になる」と指摘。そして、「住宅問題を検討するため、日本経団連も住宅委員会を設けた」ことを説明した。
サハリンとの経済交流に関連して奥田会長は、「これからは、日本国内だけでなく、外に向かって仕事をしていくべきだ。外国に目を向けていかないと21世紀には取り残される」との考えを示した。


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