経営タイムス No.2646 (2002年9月19日)

日本経団連・連合首脳が懇談

−当面の経済運営や雇用・賃金問題などで意見交換/懇談会継続開催も確認


日本経済団体連合会(日本経団連、奥田碩会長)と日本労働組合総連合会(連合、笹森清会長)の首脳懇談会が12日朝、東京・大手町の経団連会館で開催された。5月に日本経団連が発足して初めての会合では、同懇談会を今後も継続開催していくことが確認されたほか、当面の経済運営や雇用・賃金問題、ワークシェアリング、企業倫理の問題などについて意見を交換した。

奥田会長/「共感と信頼」の必要性を指摘、笹森会長/労使が協力し地方経済打開を

懇談会には日本経団連から奥田碩会長、浜田広副会長をはじめ16名が、連合からは笹森清会長をはじめ、榊原長一会長代行ら17名が出席した。
懇談の冒頭、両会長がそれぞれあいさつ。笹森会長は「地方の経済情勢はきわめて厳しい。状況は日を追って悪化している。労使が協力して政策転換を図るべきだ」と強調。今後の春季労使交渉については「賃金問題だけでなく、幅広い問題について話し合っていきたい」と述べた。
これに対し奥田会長は「会長就任にあたり“多様な価値観が生むダイナミズムと創造”とそれを支える “共感と信頼”の基本理念を提起したが、日本の将来のために国家間、労使間、企業内の個人間、または会員間でも共感と信頼が必要」と指摘。その上で、「労使は角を突き合わせるのでなく、スクラムを組んで事にあたることが大切」との考えを示した。さらに、景気回復には「1400兆円超といわれる個人金融資産を動かすことと、早急な不良債権処理が必要であり、これからも政府に働きかけていきたい」と述べた。
懇談での双方の発言概要は次のとおり。

【当面の経済運営について】

(連合側)
非常に大きな激変の中で3つの課題が挙げられる。まず、国家戦略としての産業政策。次に中国とどう共存していくか。さらに技能の継承あるいは教育訓練、能力開発を通して意識の変革をいかに図るべきかである。労働者のスキルアップは若年者だけでなく中高年にも必要だが、労働組合として、国として、どうサポートしていけば良いかは労使共通の課題である。
(日本経団連側)
ここ10年の経営環境を見ていると、政官労使が新しく成長を作り上げていかなければならない。そのためには従来の成長を前提とした経営の大原則も変える必要がある。例えば少数精鋭という大原則では、会社は残るが社会がもたない。このため、賃金を下げてでも雇用を守るべきだ。

【雇用問題について】

(連合側)
来春高校卒業予定者の2人に1人が就職できないという。中にはフリーターもいるが、12年間の学びを生かして経済的に自立しようという若者の真摯な気持ちに経済界が応えていくべきである。
(日本経団連側)
日本の国際競争力が急激に下がっているが、これは高コスト体質や内なる国際化が不十分なことが原因である。国際競争力という面でインフラを整備し、新しい企業を誘致すれば雇用の創出にもつながるだろう。

ワークシェアリングや企業倫理問題でも論議

【企業倫理問題について】

(連合側)
企業倫理の問題については、労働側もその責任は大きいと思う。企業の中の不正防止策として情報公開や透明性の向上が挙げられるが、事件や事故だけでなく経営方針についても労使が話し合うべきである。また、適切に労使協議が行われているとは思えないケースが多く、労働協約も見直していくべきである。企業の不祥事が景気の低迷を招いている一因ではないかと思う。
(日本経団連側)
国際情勢の変化は日本の企業が予想していた以上に厳しく、これを乗り越えるには労使協調の路線を保ちながら職場のモラールをいかに保っていくかが重要。それを通じて透明性の問題を徹底的に追求し、経営者は企業倫理の確立に責任を持って努力していくべきである。

【ワークシェアリングについて】

(連合側)
中長期的なワークシェアリングについて日本社会全体が真剣に考えていかなければならない。また、仕事がないという状況では社会的に不安を抱えることになるため、時間管理を含めてワークシェアリングについてお互い考えなければならない。
(日本経団連側)
これからは中長期的なワークシェアリングについて研究だけでなく実行に移していかなければならない。以前は社員と臨時従業員という形で大きい括りで考えれば良かったが、パートなどの問題を含めて複雑化してきている。慎重に考えないと競争力の基盤が崩れてくるのではないか。

懇談ののち、笹森会長は、「21世紀型の労使協議のあり方については中央段階でまとめ、各企業がそれに対してどう応じるかというやり方をとりたい。ワークシェアリングの方向性では政労使の意見が一致しているが、できれば各論展開して個別対応の話し合いをしたい」と述べた。
これに対し奥田会長は「これ以上の土地や株式などの資産デフレがなければ、不良債権はここ2年くらいで処理できるのではないかと思う。また、中小企業の失業者のセーフティネットをどう張るか、その予算をどうするかについて話し合っていきたい」と呼びかけた。

年3回ペースで開催へ

会合ではこのほか、これからの懇談予定について話し合われ今後は、年3回のペースでトップ懇談会を開催することを双方が確認した。


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