経営タイムス No.2646 (2002年9月19日)

大規模な先行減税を主張

−日本経団連、15年度税制改正で提言


法人税制抜本改革などを提起

日本経団連では、年初より、税制改革は、経済構造改革の柱であるとの認識の下、2月、5月、6月と3次にわたる提言を取りまとめ、大規模な減税を先行して実施すべきであると、繰り返し主張してきた。

こうした働きかけの成果もあり、8月はじめには、小泉首相が1兆円を超える先行減税を行うとの方針を打ち出し、また、経済財政諮問会議では、GDPの0.5%以上、額にして2〜3兆円規模の減税が検討されるなど、平成15年度改正において相当規模の減税がなされることがほぼ確実な状況となってきている。

こうした動きを踏まえ、日本経団連は17日、理事会において、「平成15年度税制改正に関する提言」をとりまとめ、与党・政府等関係方面に建議した。

提言ではまず、日本経済の現状について、内需主導型の経済成長とは程遠く、世界経済の先行き不透明感や株価の低迷により、その先行きは全く楽観できないとした上で、経済活力を再生していくためには、総額2兆円(増税措置との差額でネット1兆円超)を上回る規模の先行減税が必要としている。また、併せて、2002年度から2006年度における歳入の中立も打ち出している。

次に各論として、(1)国際競争力強化に向けた法人税制の抜本改革(2)金融・証券市場の活性化に向けた税制措置(3)地方税改革(4)住宅関連の税制改革などデフレ脱却に向けた需要喚起策を求めている。

(1)国際競争力強化に向けた法人税制の抜本改革では、まず、わが国が創造的科学技術立国として中長期的に発展していくために必要不可欠な税制として、研究開発促進税制を恒久的に導入するよう求めている。また、海外に比べ高い水準にある法人実効税率について、その欧州諸国並みへの引き下げを要望している。さらに、わが国企業の生産性の向上に直結するIT投資を中心とする投資促進税制の創設も主張している。

(2)金融・証券市場の活性化については、最近の証券市場の低迷が、金融システムの動揺や景気回復の遅れを助長しているとの観点から、株式譲渡益課税の大胆な簡素化、または、時限的な非課税措置の導入を行うべきとしている。

(3)地方税改革では、まず、総務省・旧自治省案による法人事業税の外形標準課税化に対しては、改めて反対を表明した。固定資産税・都市計画税については、平成15年度がその評価替えの年度であることを踏まえ、経済の実態を踏まえた軽減を求めている。

デフレ脱却へ需要喚起策も

さらに、(4)デフレ脱却に向けた需要喚起策としては、住宅投資促進のための相続税・贈与税の見直し、都市再生ならびに土地流動化に必要な税制措置を早期に実施すべきことを提言している。また、第2次ベビーブーマー世代が住宅取得期に入るこれからの10年間が、良質な住宅ストック形成の最後のチャンスであるとの観点から、住宅ローン利子の所得控除制度を創設し、当面の間、現在の住宅ローン税額控除制度との選択適用の容認を求めている。

政府・与党における平成15年度税制改正の議論は、今後年末に向けて活発化することとなる。小泉総理の指示の下、先行減税の流れができつつあることから、企業活力を引き出し経済活性化を図る税制を構築する好機であり、日本経団連では、引き続き関係方面に働きかけを続けていく予定である。


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