経営タイムス No.2650 (2002年10月17日)

日本経団連「企業不祥事防止策」を決定

−「企業行動憲章」など改定/「社会の信頼と共感」強調


日本経団連の奥田碩会長・企業行動委員長と池田守男・企業行動委員会企画部会長は15日、東京・大手町の経団連会館で記者会見した。同会見は、この日の理事会で決定した「企業不祥事防止策」に関して行われたもの。奥田会長が同防止策で最も重視している経営トップの役割と責任について述べた後、池田部会長が概要を説明。経営トップのイニシアチブ強化や、企業倫理ヘルプライン(相談窓口)の設置をはじめとする社内体制の整備促進などを訴えた。

奥田会長らが記者会見し説明

会見のなかで奥田会長は、企業活動の基本は社会の信頼と共感を得ることであるとした上で、最近の企業不祥事により、経済界全体の信頼と共感が大きく損なわれたと指摘。そのため、「企業が社会の信頼と共感を得られるかは経営トップの姿勢にかかっている。社内のさまざまな声を吸い上げる努力を惜しんではならない」と、たとえマイナス情報であっても、それが即座にトップの耳に入るような企業風土づくりの必要性を強調した。
さらに、日本経団連として、防止策に示したさまざまな対策を実施するが、各企業の不祥事防止への取り組みが最も重要であることを、すべての経営者に強く訴えたいと結んだ。
続いて、池田部会長が、防止策の概要を説明。従来の企業行動憲章は反社会勢力との決別という面で成果をあげたが、昨今、消費者・ユーザーとの信頼関係で企業不祥事が発生し、特に経営トップの対応が問われていると指摘。このため、日本経団連としては、(1)企業倫理全般に関わる経営トップのイニシアチブ強化 (2)法令遵守等に向けた実効ある社内体制の整備 (3)不祥事が発生した場合の対応――の3つの観点から具体的対策を実施し、改めて会員企業の自発的・積極的取り組みを促していくと述べた。

企業への措置を厳格化

具体的対策については、「企業行動憲章」「企業行動憲章実行の手引き」の改定、企業倫理・企業行動強化のための社内体制の整備・運用の要請、各社の不祥事防止策確立への支援、不祥事を起こした企業への日本経団連の措置の明確化・厳格化などを定めた。
企業行動憲章の改定は、副題として「社会の信頼と共感を得るために」を付したほか、(1)法令遵守の徹底(前文) (2)消費者・ユーザーの信頼獲得(第1条) (3)不祥事防止策の確立と発生時の対応および問題解決への経営トップが果たすべき役割と責任の明確化(第9条、第10条)――を盛り込んだ。
企業行動憲章実行の手引きについては、企業行動憲章改定を踏まえ、企業倫理・企業行動に取り組む体制の整備や企業倫理ヘルプライン(相談窓口)の整備、企業倫理浸透状況のモニタリング等に関し、各社の参考となる具体的アクション・プランをより充実させた。
企業倫理・企業行動強化のための社内体制の整備・運用については、企業行動憲章の精神を実践する観点から、(1)行動指針の整備・充実 (2)経営トップの基本姿勢の社内外への表明と具体的な取り組みの情報開示 (3)全社的な取り組み体制の整備 (4)「企業倫理ヘルプライン(相談窓口)」の整備 (5)教育・研修の実施・充実 (6)企業倫理の浸透・定着状況のチェックと評価 (7)不祥事が起こった場合の適時適確な情報開示、原因の究明、再発防止策の実施、トップ自らを含めた関係者への厳正な処分――の7項目を要請。さらに、新入会員には入会時に企業行動憲章を遵守する旨を書面で提出してもらうこととした。

各社の自発的取り組み促進へ/5つの支援活動実施

各社の不祥事防止策確立への支援については、企業不祥事防止に向けた各社の自発的取り組みを促進する観点から、日本経団連としては、次の5つの支援活動を行う。

  1. 会員企業による企業行動自己診断の推進
    アンケートやヒアリング等により、各社の企業行動の現状を定期的に調査・分析し、公表する(第1回調査は2002年11月の予定)。また、会員企業が独自に企業行動をチェックできる自己診断リストを作成・提供し、希望に応じて、各社の企業行動プログラムとその実施状況の診断を実施。

  2. 会員企業トップ向けの相談窓口の設置
    日本経団連内に会員企業トップ向け相談窓口を設置し、企業行動に関わる問題について、会員企業代表者が日本経団連会長、企業行動委員長と個別に相談する機会を設ける。必要に応じて、弁護士等の専門家を紹介する。

  3. セミナーの開催等
    経営トップや企業倫理担当役員を対象としたセミナー・研究会の開催や、企業行動に関する各社の具体的取り組み事例、社内研修事例、不祥事対応事例等の収集および会員企業への情報提供を行う。

  4. 「企業倫理月間」の設定
    企業行動に関する会員企業の継続的な取り組みを促すため、毎年10月を「企業倫理月間(仮称)」として、2003年から実施する。

  5. 企業倫理専門部門の新設
    日本経団連事務局内に、企業倫理を専門に取り扱う部門を新設し、会員会社に対する各種支援活動および関連業務等を行う。

不祥事を起こした企業に対しては、日本経団連による措置の明確化・厳格化等を定めた。
従来、不祥事が生じた場合、会員の申し出をもとに措置を決定してきたが、今後は、ケースによっては独自の判断で、日本経団連としての措置を決定する。措置の内容は、これまでの厳重注意、役職の退任、会員企業としての活動自粛に加え、会員資格の停止、退会の勧告、除名も行う。なお、措置決定に関わる判断基準は、別途内規を定める。
また、再発防止のための企業行動改善策とその実施状況の報告や、日本経団連の企業・社会関係会合等への出席を要請する。
事態の改善がみられると判断された場合には、措置を解除する。

この企業不祥事の防止策は、会員企業に配布するとともに、日本経団連HP(http://www.keidanren.or.jp/indexj.html)に全文を掲載し、周知徹底を図っている。


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