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経営タイムス No.2652 (2002年11月7日)

第55回東北経営者大会

<意見交換>


八島俊章・宮城経協会長を座長とする意見交換には、日本経団連から奥田会長、柴田副会長、矢野専務理事らが臨んだ。
テーマは、政治経済、雇用・労働、地域振興、産業振興――など。宮城経協・平賀ノブ理事、岩手経協・菊池昭雄副会長、青森経協・北村真夕美理事、秋田経協・高橋良治評議員、山形経協・大友久太郎副会長、福島経協連合会・小針健治会長らが発言した。

● 政治経済問題

政治・経済問題で平賀氏は、今後、わが国経済の再生対策はどうあるべきか、さらに、社会保障制度改革の方向性はどうあるべきかについて質問。
奥田会長は、不良債権処理を加速し事業再構築を進めれば、倒産、失業が増える懸念から、規制緩和や中小企業金融への配慮といったセーフティネットの拡充をセットに実施していくべきと述べた。
また、政府の構造改革特区に触れ、特区の試みが契機となって新たな産業や雇用が産まれることに期待し、日本経団連として特区に関する地方経協の要望を積極的に聴取し、新規事業・雇用創出につなげる努力をしたいとも語った。
さらに社会保障制度改革について奥田会長は、「社会保障制度は、負担と給付を通じた国民の富の再分配の問題。国民としてどこまでの給付を求め、どこまでの負担なら許容できるのか、自分自身の問題として考えてみることが大事」と指摘するとともに、「国民の将来不安を解消し、社会のセーフティネットを構築するためにも社会保障のタブーに挑戦し、真の改革を提言していきたい」と決意を述べた。

● 地域振興問題

地域振興問題で高橋氏は、地方の自立と連携を支える基礎的社会資本整備について、地方の意見がもっと反映されるべきと主張。これに対し奥田会長は、日本経団連の「地方団体長会」や「地域活性化委員会」を、地方の意見の聴取・反映の場として設置していることを報告。
社会資本の整備については「真に必要な社会資本整備はやるべきだが、明確な計画をもって臨むべき。それが経済活動につながることであればなおのこと採算性を無視できない」と述べた。

● 雇用・労働問題

雇用・労働問題では、菊池氏が安定した労使関係の構築、最低賃金制度の見直しについて、また、仕事と家庭の両立支援のあり方、インターンシップ制度への継続的支援について北村氏が意見を求めた。
安定した労使関係の構築について柴田副会長は、今後も、労使の信頼関係が新たな経済成長にとって重要な役割を担うとする一方で、加速度的に変化する環境に機敏に対応していかなければならないことも強調。「あるべき方向を見据え、危機意識を共有しつつ新たな展開を図っていかなければ、安定した労使関係の実現は不可能」と述べた。
また、経営者の姿勢が、よりよい労使関係の構築にもつながるとし、10月に日本経団連が改定・発表した「企業行動憲章」に理解と協力を要請した。
最低賃金制度の見直しについては矢野専務理事が対応。旧日経連が主張した産業別最低賃金廃止の主張を使用者側委員の発言に反映させ、労使関係のイニシアチブ発揮に向けた見直しの議論を行っていることを報告し、各県経営者協会に支援と協力を求めた。
仕事と家庭の両立支援について矢野専務理事は、特に少子化による労働力人口減少を国の最重点課題ととらえ、日本経団連でも国民生活委員会などの中で、少子化対策、男女共同参画社会の推進等の検討を深めていることを報告。さらに、仕事と家庭生活の両立では、「職場においても両立支援に対する意識啓発をはかり、それぞれの企業の実態に即した対応を、労使自治で推進することが一番よい方法」と述べた。
また矢野専務理事は、将来の労働力確保の意味からも、実施効果が高いインターンシップ教育に、企業の理解と協力を求めた。

● 産業振興

産業振興では大友氏が、産学官連携の促進支援を日本経団連に求めるとともに、日本経団連発足記念として事業化に成功した事例に対する「プロジェクト大賞」創設を提案した。また、小針氏は、新産業として農業振興を、また、地方都市再生のために店と住まいを一致させる商店街回帰を提案した。
これらの意見に柴田副会長は、日本経団連が起業家精神の涵養と企業間連携の推進のために起業フォーラムを開催したことを報告。新たな企業や起業家を支えるべく、産学連携を効果的に機能させていくよう努めなければならないと述べた。また、「プロジェクト大賞」の設置については時宜に適うものとし、地方団体長会はじめ関係各会合における提案、協議を求めた。
農業政策について柴田副会長は、「農業は新しい産業の起爆剤になり得る」とし、高い生産性をもつ産業へと転換し、株式会社参入の早期実現を求めた。また、商店街の活性化は、「街の活力の中心として、商店主自らが知恵を出し合い、活性化させていく意識をもつことが大切」と力説した。


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