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経営タイムス No.2654 (2002年11月21日)

高卒採用枠の拡大を

−坂口厚労相、遠山文科相、若年者雇用問題懇で要請


来春新規学卒者の就職環境が厳しさを増しているなか、坂口力・厚生労働大臣ならびに遠山敦子・文部科学大臣と日本経団連の奥田碩会長はじめ経済団体首脳による「若年者雇用問題懇談会」が19日朝、東京・永田町のキャピトル東急ホテルで開催された。席上、坂口、遠山の両大臣は、来春新規学卒者のうち、とりわけ高校生については内定率が過去最低となるなど、深刻な状況にあると説明。その上で、産業界に対し「採用枠の一層の拡大に協力願いたい」と要請した。これを受け、奥田会長は、都道府県経営者協会を通じ企業に協力を要請すると応えた。日本経団連では今後、主要会合なども通じ両大臣からの要請趣旨を周知していく予定。

懇談会には、産業界から奥田日本経団連会長はじめ日本商工会議所の浅地正一特別顧問・労働委員長、全国中小企業団体中央会の石川忠副会長ら経済団体首脳が出席した。
冒頭、坂口厚生労働大臣は、当面の景気・雇用情勢にふれ「わが国の景気は引き続き持ち直しつつあると感じるが、そのテンポが緩やかになっているのも事実。雇用失業情勢も改善が進まない」と説明。こうした状況の中、新規学卒者の就職状況が依然として厳しい状況にあり、「特に、高校生については、求人が過去最低であった昨年度をさらに下回っている。内定率も昨年度を大幅に下回っている」と述べた。このままの状況では、「就職を希望しながら職に就けず、不安のまま卒業する高校生が多数出ることになる。まさに憂慮すべき状態である」と懸念を表明。このため、「厚生労働省では、新規高卒者就職支援総合プログラムを策定し、未内定生徒に対する集中的な就職支援を行っている。若年者のトライアル雇用などを有効に利用したい」と強調。産業界に対して、「若者たちの置かれている厳しい状況を理解してほしい。一人でも多くの採用をお願いしたい」と採用枠の拡大を要請した。遠山文部科学大臣はあいさつの中で、「高校生はじめ働く意欲を持つ若者が、社会への門出にあたり、職を得られないと希望を失う。これは、社会にとっても大きな痛手である」と発言。採用枠拡大は、日本経済全体が活性化しないと難しいことは理解しているが、「いろいろ工夫して、若者に就職機会を与えてほしい」と理解・協力を求めた。
また、遠山大臣は、文部科学省では、高校生の就職に関する支援施策として「高等学校就職支援教員」の配置、「学校いきいきプラン」によるキャリア・アドバイザーの配置を進めていることや若者の職業観育成のため、インターンシップなどの就職支援策を講じていると説明した。

これを受け、奥田日本経団連会長は、「来春高卒者の内定率が悪いことに心を痛めている」と発言。日本経団連の取り組みについては、「これまでも都道府県の各経営者協会に対し、『1社1人の採用増を』と協力を要請してきた。今回も早速、各経営者協会に両大臣からの要請趣旨を伝える」と応えた。
奥田会長はさらに、最近の若者の就職動向にふれ、「本当に仕事がしたくて、仕事がないのか。仕事がしたくないのか、仕分けが難しい」と語り、若者の職業観が希薄となり、フリーター問題につながっているとの考えを示した。
また、「中国や韓国の若者からは、ぎらぎらとした働く意欲を感じる。日本の若者には覇気が感じられない。親や社会に対する甘えがある」と指摘した。
その対策について奥田会長は、「日本の若者に、心の張りをもたせることが大切。ある期間に団体生活を経験させることも一策と思う。団体生活を通じ、職業観育成を図るような仕組みができないものか」と述べた。

浅地日商特別顧問は、「日商としては、可能な限り採用枠拡大に協力したい」と述べるとともに、「しかしながら労働市場は厳しい。まず、景気を回復軌道にのせてほしい」と求めた。また、技術立国として技術基盤の維持強化が重要として「ものづくりの技術の基礎となる理科・算数などの基礎学力向上のため、理科の実験の拡充など興味をもてる適切な指導に努めてほしい。また、できれば義務教育段階で働くことを考えるチャンスを作り、職業教育の充実もお願いしたい」と遠山大臣に要望した。併せて、日本商工会議所としての取り組みについて、「これまで各地で新卒者の就職相談会や情報提供を行い、企業と学校の橋渡しとなっている」と説明した。全国中小企業団体中央会の石川副会長は、雇用問題が危機的状況との認識を示した上で、「長引くデフレ不況で、改革の痛みが中小企業に集中的に現れている。雇用を守るのが精一杯」と説明。当面は、即効性のある補正予算が実行されることを期待していると述べた。

日本経団連では今後、諸会合などを通じ、両大臣からの要請趣旨を周知していく予定。


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