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経営タイムス No.2655 (2002年11月28日)

日本経団連が中国へ経済事情視察団、日中産業シンポジウム開く

−「誠信経営」で意見交換


日本経団連は14日から17日まで、中国江蘇省蘇州市に経済事情視察団(団長・奥田碩会長)を派遣した。蘇州市において第7回日中産業シンポジウムを中国企業連合会と共催したほか、蘇州市指導者や日系企業幹部と懇談。また、シンポジウムでは、両国経営者約170名の参加を得て「誠信経営―持続可能な企業発展のために」をテーマに意見を交換。企業は社会的な存在であり、成長、発展のためには企業倫理を確立することが不可欠であること、その実現には企業トップの果たす役割が極めて重要であることを日中の経営者が確認した。

企業倫理確立、トップの役割の重要性を確認

蘇州国際会議中心で開催された第7回日中産業シンポジウムのテーマにある「誠信」とは、「嘘をつかず約束を守る」という意味である。
日本では、企業の不祥事が続発しているが、中国でも粉飾会計など企業への信頼感を揺るがす事件が多数起きている。このため、中国側の希望により、今回のシンポジウムでは“誠信”をキーワードに、企業倫理の問題を取り上げることとなった。

冒頭あいさつした陳錦華・中国企業連合会会長は、誠実と信用こそが市場経済の発展に必要で、経済のグローバル化によって、ますます重要になっていると主張。そのためには、政府の政策とともに、企業内のシステム整備が必須であり、何より企業経営者の率先垂範が欠かせないと強調した。

陳会長のあいさつを受けて、奥田会長が基調講演を行った。日本経団連発足の経緯と理念、日本経済の現状と課題、企業不祥事に対する日本経団連の取り組み等について述べるとともに、特に企業倫理確立について、(1)今や倫理確立が企業の競争力を左右する重要な問題 (2)不祥事を隠蔽することは不可能 (3)不祥事そのものが発生しない組織・風土を作ることが先決 (4)個々の従業員に企業は社会的存在であるとの認識を徹底させる必要がある (5)倫理確立には経営トップの果たす役割が最も重要――と強調した。

中国側基調講演として、張彦寧・中国企業連合会理事長が、中国における企業不祥事の続発は企業への不信を招き、今や信用問題が中国のウィークポイントとなっていることを指摘。事あるごとに朱鎔基総理が社会の誠信建設を訴えていると述べ、企業は、コーポレートガバナンス、労使の良好なコミュニケーション、内部監査制度等を構築していく必要があると主張した。

講演の後、3つのパネルディスカッションが行われた。立石信雄・CBCC(海外事業活動関連協議会)会長は、企業の社会的責任を強調し、「企業は何のために存在しているのか」「われわれは何のために働いているか」を日々自覚するために、企業は経営理念を明確にしておかなければならないと述べた。
柴田昌治・日本経団連副会長は、「企業倫理の根本は、顧客、従業員、取引先、株主、社会などステークホルダーを大事にする経営理念を持ち、実行すること」と述べた。森下洋一副会長は、日中両国が更なる経済発展を遂げるためには、双方が国際的に通用するビジネスルールを構築・共有化し、このルールに則って行動する必要があると強調し、特に「知的財産権の更なる尊重」と「環境問題への対応」を訴えた。
中国側は、孟暁蘇・中房集団(不動産)董事長、徐楽江・上海宝鋼集団公司副総経理、王光興・海南椰子集団総経理がスピーカーを務め、いずれも市場経済下では「誠信」が企業の繁栄の鍵であり、信用によるブランド構築が重要と主張した。

シンポジウムの総括として、孫延副・中国企業連合会副理事長が、「国、企業、個人のいずれのレベルでも信用を守ることは大事だが、企業の信用が社会の信用の基礎となる。信用される企業になるためには、企業の中に倫理を確立する必要があるが、このためには従業員代表会のような監査メカニズムとともに、高尚なモラルを持つ経営者の育成が欠かせない。かかる経営者を育成していく上で、中国企業連合会と日本経団連の果たす役割と責任は大きい」とまとめた。
最後に、矢野弘典専務理事が同シンポジウムについて、「回を重ねるごとに中身が濃く、抽象論から現場に近い、地に足の着いた議論が展開されるようになっている」と評価し、シンポジウムを終了した。


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