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経営タイムス No.2692 (2003年9月18日)

日本経団連の「今次年金制度改革についての意見」

−「三位一体」の改革提言(公的年金)/自助努力の支援拡充を(私的年金)


日本経団連は10日、来年の年金制度改正に向けた提言書「今次年金制度改革についての意見」を発表した(一部9月11日号既報)。同提言書では、今回の年金制度改革がめざすべき最終的な目標を、経済社会の「活力を維持」し、高齢社会の下でも「持続可能な制度」を構築することにより、国民の不信感・不安感を払拭して、年金制度に対する「信頼性」を回復していくことに置いている。そのためには現在の年金制度が抱える課題である現役世代の負担の増大、世代間の不公平の拡大、国民年金の空洞化を解決しなければならないとし、その方向として、公的年金においては、(1)保険料率の増加抑制 (2)既裁定者も含めた給付の抑制 (3)基礎年金の間接税方式化、による三位一体の年金制度改革を推進することを打ち出している。

また、老後生活の支柱のひとつである私的年金についても、自助努力の支援拡充といった手立てが必要であると主張している。

日本経団連では、同提言書に盛り込んだこれら改革の着実な実現に向け、政府・与党のほか、関係方面への働きかけを一層強化する考えだ。
同提言書の主な内容は次のとおり。

1.三位一体の年金改革

(1)保険料率の増加抑制

厚生年金保険料率は現行13.58%を極力上回らない水準で固定する。企業の人件費、勤労者の家計負担、医療・介護等の社会保険料負担を考えれば、保険料率は15%が限界。また、厚生年金積立金は高齢化のピーク時に向け、極力圧縮する。

(2)給付の抑制

給付は一定の期間をかけて、少なくとも2割程度抑制する。まず、1999年改正時の給付乗率5%カットの際にとられた従前額保証の廃止ならびに物価スライド停止分(マイナス1.7%)の完全実施を行う。高所得者を中心に給付を抑制するが、低所得者には配慮をする。これらの給付抑制を早期実施した上で、経済・人口変動を踏まえたスライド方式の導入を図る。

(3)基礎年金の間接税方式化

2004年改正において、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引き上げを確実に行う。財源については公的年金等控除の廃止や消費税を活用する。また、国民年金保険料の徴収強化、保険料と税の一体徴収を行う。

2.私的年金の拡充

税制上の支援措置を充実するなど、政策上のインセンティブを強化する。特別法人税の即時撤廃や確定拠出年金の拠出限度額の引き上げなどを行う。

3.その他の制度改革について

(1)短時間労働者への適用

適用に関する諸課題を解消したうえで、影響を最小限にとどめる適用のあり方やそのための期間を検討する。

(2)第3号被保険者制度

同制度に関する問題(負担のアンバランス等)については、基礎年金の税方式化で解消する。

(3)遺族年金

若齢遺族については、有期年金化し、就労促進を行う。また高齢者の遺族年金については、原則課税とする。

(4)在職老齢年金

就労を阻害しないシンプルでわかりやすい制度とする。

(5)支給開始年齢

当面は引き上げない。

(6)資金運用のあり方

分散投資は継続する。なお、年金住宅融資・大規模保養基地は廃止し、育英奨学金や教育貸付金などの新規創設には反対する。

(7)公的年金の一元化

早期に統合すべきである。

(8)次世代育成支援策

年金制度での実施は適切でない。社会基盤整備で対応すべきである。

(9)個人に対する年金情報の提供

ポイント制の導入よりも、現行措置の拡充が基本である。


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