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経営タイムス No.2694 (2003年10月2日)

日本経団連、連合首脳が懇談

−景気・雇用・社会保障問題などで意見交換
−「雇用と社会保障が最重要問題」/奥田日本経団連会長、改めて指摘


日本経団連(奥田碩会長)は9月24日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、笹森清会長)との首脳懇談会を開催した。同懇談会には日本経団連から奥田会長、西室泰三副会長ら14名が、連合から笹森会長、榊原長一会長代行ら12名が出席。景気や雇用、社会保障など労使が取り組むべき重要課題に関し、現状認識や今後の対策について意見を交換した。

笹森連合会長、年金問題の重要性強調

冒頭あいさつに立った笹森連合会長は、現在の経済社会状況について「強いものはますます強くなり、弱いものはそのままにされるという二極化状態が進んでいる」と指摘。その上で、「雇用不安、将来(生活)への不安、安心(安全)に対する不安の除去に、国民全体で取り組んでいくべきだ」と訴えた。さらに笹森会長は、最優先課題は景気回復であるとし、経済活性化に向けた中小企業対策、安易な雇用調整の回避、雇用の創出を行わねばならないとした。また、社会保障問題、特に年金問題の重要性を強調し、財源問題については、「税制とセットで考えていくことが必要である」との考えを示した。

続いてあいさつした奥田会長は、雇用と社会保障の問題が一番重要であることを改めて指摘。現状については、「将来生活への不安が、消費や設備投資を抑制し、景気低迷を招くという悪循環に陥っている」と指摘し、その脱却のために、「景気回復を行いながら、構造改革も進めなければならない」と語った。また、雇用問題については、「雇用はそう簡単に創出できない。国民の需要を喚起する新しい商品開発などが課題である。雇用需給のマッチングの問題にも取り組みつつ、景気回復を中心に失業を減らしていかなければならない」との考えを述べた。

■意見交換

あいさつ後の意見交換では、連合側から意見を述べた。
連合側はまず、「4〜6月期は経済指標に良い数字が出ているが、景気の足取りには危惧すべき点がある。完全失業率も高止まりしている」として、雇用対策、中小企業向け対策、基礎年金の国庫負担引き上げ等のため、補正予算編成が必要であると訴えた。
また、社会保障の大きな課題である医療費の診療報酬改定については、賃金・物価の動向を反映させるべく、労・使・健保連の支払側3団体が連携を強化していくよう呼びかけた。
さらに、中高年の失業率が高いことや若年者にフリーターや無就業者が増加していること、不払い残業を完全に撲滅すること、ワークシェアリング実現に向けての労使の取り組みを促進することなどを重要課題として指摘した。

次に日本経団連側からは、まず社会保障の問題について、「社会保障と税とをセットで考える」「診療報酬改定について協調する」という連合の考えに賛意を示した上で、「年金保険料率を20%とする厚労省の考え方に労使で反対していくべきだ」と述べた。
高齢者雇用の問題については、「高齢者を支えられる側から支える側に変えていくことは必要」とした一方、「定年延長の法制化などによって一律に実施すると、企業活力が損なわれる」として、かえって悪い結果を生じる危険性を示唆した。
規制改革をめぐる問題については、「規制改革を進めると、結果的に不平等が発生する可能性がある。何らかのセーフティ・ネットを設ける必要があるだろう」との意見が出た。

意見交換後、奥田会長は「日本の雇用問題については、時間軸を長く取った見方も必要だ。少子・高齢化が進む中、高齢者、若年者、女性、外国人の雇用などについて考えていく必要がある。2025年をひとつの目安に、日本経済をどううまくランディングさせるかを考えていきたい」と結んだ。


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