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経営タイムス No.2708 (2004年2月5日)

日本経団連、連合首脳が懇談

−春季労使交渉の諸課題で論議


日本経団連は1月29日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合)との首脳懇談会を開催した。懇談会には日本経団連から奥田碩会長、柴田昌治副会長、勝俣恒久 評議員会副議長・金融制度委員長、立石信雄 国際労働委員長、大國昌彦 雇用委員長、山本一元 環境安全共同委員長、普勝清治 労使関係委員会共同委員長らが、連合から笹森清会長、榊原長一会長代行らが出席。賃上げや賞与・一時金交渉、今後の賃金制度や労使のあり方など、春季労使交渉をめぐる諸課題について意見を交換した。奥田会長は、企業の存続と雇用の維持、さらには日本の諸制度について、労使で話し合うことの重要性を強調した。

冒頭のあいさつで笹森会長は、「経営側は、企業は働く人のために存在するという経営の基本理念を再確認し、春季生活闘争ではきちんとした答えを出してもらいたい」と述べるとともに、「今年はすべての数字を、昨年を底として反転させていきたい」との意向を表明した。
さらに、笹森会長は、不払い残業の撲滅や社会保障費の負担増などについて、労使協調して対応していくことを経営側に呼びかけた。

続いてあいさつした奥田会長はまず、経済情勢について、「雇用状況などの先行きは依然として厳しい。構造改革の実施によって、景気回復をより確実なものにしなければならない」と述べた。
その上で、「企業は過剰設備や不良資産などを処理し、自分の身の丈にふさわしくなってきた。今後は、成長をめざす攻めのリストラを進めていきたい」と語った。
また奥田会長は、家計のあり方についても言及し、「強い増税圧力のもと、生活・家計の合理化も考えるべきだ」と述べた上で「今後は企業の存続と雇用の維持に向けて、従来の賃金の取り合いではなく、国家の諸制度についても話し合うことが大事だ」と結んだ。

■ 意見交換

意見交換では、賃金問題に関して連合側から(1)経営側が一般論としてベースダウンを言うのは将来不安を招き遺憾である (2)業績は一時金のみに反映させるという考えは望ましくない (3)これからの賃金制度のあり方を労使で前向きに考えたい (4)地方・中小企業で働く者は年収がダウンする状況にあり、その歯止めが必要である――などの意見が出された。

これに対して日本経団連側は、「一律にベースダウンを行うべきと主張しているのではなく、論議の対象となり得ると言っている」と説明。さらに、地方の中小企業などでは、企業の存続と雇用維持のため、すでに賃下げを行っているという事実を挙げ、「国際競争力の低い分野、産業、企業では、賃下げも検討しなければならない」との厳しい現状を指摘した。また賞与・一時金については、「付加価値に応じて成果配分を行うことは当然だが、短期的な業績向上の成果配分は、賞与・一時金で還元するべき」との考えを示した。“企業は働く人のために存在する”という理念については、経営側もすべてのステークホルダー、特に従業員を尊重すべきとの考えを持っており、「人を大切にしなければ、企業は存続できないという認識を持っている」と強調した。

最後に奥田会長は、「ここ数年は、日本の21世紀の帰趨を決める大事な時期」とした上で、労使が協調できることは協調して、政府に制度変革などを働きかけ、21世紀後半の日本のあり方を決めていかなければならないと締めくくった。


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