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経営タイムス No.2712 (2004年3月4日)

日本経団連、野沢法相と意見交換

−電子公告制度導入など今国会での成立を要望


日本経団連は2月23日、都内のホテルで野沢太三法務大臣との懇談会を開催した。日本経団連と法務大臣との懇談会は、通常国会冒頭のこの時期に毎年行っているもので、通常国会に提案され経済界が要望している法案への理解を深めることが目的。法務省からは野沢大臣はじめ実川幸夫副大臣、中野清政務官らが、日本経団連からは御手洗冨士夫副会長・経済法規委員長、槙原稔副会長、西室泰三副会長、櫻井孝頴評議員会副議長のほか、関係委員長・部会長らが出席。株主代表訴訟制度や電子公告制度など企業法制について意見交換した。

懇談の司会を務めた御手洗副会長はまず、1999年5月にコーポレート・ガバナンス委員会(現経済法規委員会)の委員長に就任して以来、同懇談会において、保岡興治法相や高村正彦法相、森山眞弓法相にさまざまな要望をするとともに、意見交換を踏まえて、商法や倒産法など企業法制の重要な改正や司法制度改革が推進されてきたとあいさつした。その上で、「今国会では、経済界の関心の高い法案が多数審議される見込みである。日程も厳しいが、電子公告の導入に関する法案は、会社コストの節減や会社関係者の利便性向上の観点から早期成立を期待している」と述べた。
また、御手洗副会長は、来年2005年の通常国会への法案提出に向け、法務省の法制審議会で審議している「会社法の現代化」について、理念先行ではなく、現実の経済実態を前提とした検討を求め、特に株主代表訴訟制度の見直しが重要であることを強調した。

これに対して野沢法相は、「電子公告制度と株券不発行制度の導入については、全力を挙げて今国会で法案を成立させたい。会社法の現代化については遅滞無く審議を進めたい」との意向を示した。さらに、民事再生法、会社更生法に続く倒産法制改正の仕上げとして、破産法の全面改正を今国会で最初に実現したいと述べたほか、「司法制度改革も仕上げ段階にある。日程は厳しいが、国会の法務委員会で審議予定の法務関連法案11本、司法制度改革関連法案10本のいずれも成立を期したい」と語った。

次に、実川副大臣が、(1)議員立法を含め、多くの会社法制の改正が最近なされたが、企業を取り巻く社会変化に一層対応したい (2)カタカナ表記である明治32年制定の会社法を現代語化し、商法や商法特例法、有限会社法に分かれている会社法制を利用者にわかりやすい形に整備する (3)司法制度改革推進本部が提出した法案をサポートするとともに、司法手続きの円滑化に資する民事訴訟・民事執行法の改正法案や公示催告手続きに関する改正法案などの成立を期したい――など、当面の企業法制改革の状況について説明した。

続いて、日本経団連からはまず、株主代表訴訟制度に関し、(1)訴訟委員会制度を導入すること (2)原告となる資格を訴訟原因となる行為時点の株主や1単元以上を保有する株主に限定すること (3)代表取締役・取締役の責任軽減限度額を報酬等の2年分とすること――を求めた。
さらに、出資者の有限責任を確保し会社の内部関係では組合的規律が適用されるという新しい会社類型である「LLC制度」の導入や、自己株式の新株発行手続きによらない市場売却制度の導入、委員会等設置会社の取締役が社内部門の長など使用人を兼務できるような規定の明確化などを要望した。

これに対して法務省は、「代表訴訟制度は、経営者がリスクをとって果敢に経営判断ができるようなものにしないと世界での企業間競争に負けてしまう」「できるだけ使いやすい会社法にしたい」などと応じた。

最後に、中野政務官が「年1回実施の法務大臣・日本経団連副会長レベルの会合だけではなく、部会長レベルの会合で、より詰めた議論を緊密に行い、山積する課題をこの場で決着できるようにしたい」と提案、日本経団連側もこれを快諾して閉会した。


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