[ 日本経団連 ] [ 機関誌/出版物 ] [ 経営タイムス ]

経営タイムス No.2719 (2004年4月22日)

日本経団連、介護保険制度改革で提言

−給付内容の重点化や自己負担見直しなど


日本経団連は20日、介護保険制度の改革についての意見を発表した。介護保険制度は創設後4年を経過したが、財政の悪化などさまざまな問題点が明らかになったことから、同意見書では、「加齢に伴う要介護状態の改善」という制度創設の趣旨を堅持しつつ、(1)真に必要な人へ適切な給付を重点化する (2)負担の公平・公正および納得性を確保する (3)保険者・被保険者にとって効率化する――との基本的な考え方に基づき、介護保険制度の改革を進めるべきと指摘。この考え方に基づいた改革を進め、制度の持続可能性を維持することで、経済社会の活力の維持・向上との両立が図れるとしている。改革に盛り込むべき具体的内容は次のとおり。

1.給付内容を重点化する

給付は、真に必要な人への適切なサービスに限定すべきであり、常に見直していくことが求められる。介護予防の観点からは、高齢者自身が継続した健康増進に努める必要がある。

(1)介護サービスの重点化

要支援者や軽度の要介護者の場合、利用者の生活機能・能力の回復、心身の状態の改善に資するものに重点化する。
重度の要介護者の場合も、施設から在宅サービス利用へ移行でき、在宅で生活が続けられるように、サービスを整備すべきである。
特別養護老人ホーム入所に際しては、要介護度や家族状況などを勘案して、入所の優先度合いを判断する必要がある。新規入所者については、現行基準を引き上げて重度の要介護者に限るべき。

(2)保険外サービスの充実

保険外の介護サービスを充実させる必要があり、付加的に提供した価値分については、対価徴収を可能とすべきである。

(3)いわゆる社会的入院・入所の是正

療養病床から介護施設への移行を進め、適正なケアや報酬の設計でサービスの質向上と給付の効率化を図るべきである。

2.自己負担を見直す

高齢者同士で負担を分かち合うとの視点からも高齢者自身に応分の負担を求めていく必要がある。

(1)施設入所者の食費および居住費の自己負担化

在宅サービス受給者とのバランスや低所得者などへの配慮をした上で、相当分を全額自己負担とすべきである。

(2)利用料の適正化

介護給付に伴う自己負担割合(定率1割)は、低所得者などへの配慮をした上で、受益者のコスト意識の涵養、若年者の医療保険の一部負担割合とのバランス、介護保険制度の持続可能性の観点から、引き上げる方向で検討すべきである。

3.納得感のある負担方式にする

(1)被保険者の範囲は現行を維持

被保険者の年齢基準の引き下げには、制度の趣旨、受益と負担の明確化、負担者の納得感などから、極めて慎重であるべきである。また、障害者福祉施策との統合問題は、障害者福祉施策改革を優先すべきである。

(2)保険料の法定化

事業主や第2号被保険者(40歳以上、65歳未満の医療保険加入者)などが財政運営に対して意見を言う機会はほとんどない。保険料設定には、保険料負担者などが関与できる仕組みを法定化すべきである。

4.制度内の効率化の仕組みを強化する

保険者には、機能を効果的に発揮することが求められる。そのために、(1)例えば、地域差のある認定率の是正に取り組むなどトップランナー方式を導入する (2)効率化努力を促進するように公費・介護給付費交付金の配分方法を見直す――などを行うべきである。


日本語のトップページ