日本経団連タイムス No.2728 (2004年7月1日)

日本経団連、輸出入・港湾手続き効率化で提言


日本経団連は6月22日、「輸出入・港湾諸手続の効率化に関する提言」を発表した。同提言は、(1)昨年稼動したシングルウィンドウシステム(※1)の使い勝手を改善するニーズが強いこと (2)自民党のe−Japan重点計画特命委員会で民間からの手続き簡素化に向けた具体的な提案を求められていること (3)自国のセキュリティを確保するとともに国際的なセキュリティ施策への対応が不可避となっていること――などを踏まえ、物流の効率化とセキュリティ確保の両立を図る観点から、手続きの徹底的な簡素化や完全電子化、情報の共有化、コンプライアンスの活用、政治のリーダーシップと官民の協働、国際的な動向への対応などを訴えている。日本経団連では今後、同提言の実現に向けて対外的な働きかけを強化するため、日本船主協会や外国船舶協会、日本貿易会、日本機械輸出組合、日本ロジスティクスシステム協会、全国中小貿易業連盟、日本海運貨物取扱業会、日本通関業連合会など、関係団体とも協力していく予定である。

手続き簡素化とセキュリティ確保、両立するシステム構築を

同提言が訴えていることの第一は、手続きの徹底的な簡素化である。日本の手続きは、諸外国に比しても多く、各省庁や港湾管理者ごとに、同種の手続きや申請項目が別々に存在する。こうした非効率を徹底的に見直す必要から、国際的な港湾手続きの標準を定めたFAL(ファル)条約の早期批准や、シングルウィンドウの改善などを主張。また、民間からの試案として、港湾諸手続きに関する簡素化のイメージを作成している。

第二は、手続きの完全電子化である。輸出入・港湾業務には、官民とも非常に多くの関係者が存在するため、電子化が不完全である。このため、昨年から米国当局が実施した、いわゆる24時間ルール(※2)に対しても、日本では対応に日数を要していると指摘。
そこで、(1)データとしての電子申請を原則とすること (2)申請データは関係者の相互利用を図るため国際標準に準拠すること (3)電子化促進に向けたインセンティブ措置や支援策を講じること (4)官民のネットワークを支える情報基盤の構築と最先端ITを活用するための環境整備を図ること――を主張している。

第三は、情報の共有化である。現在は各省庁ごとに似たような手続きや申請項目を別々に求めたり、港湾管理者が自治体であるために、各港に入港するたびに、少しずつ違った申請が必要になっている。こうしたことを防ぐため、関係省庁間や港湾管理者間で情報の共有化を進める必要性を訴えている。

第四は、コンプライアンス(法令順守)の活用とそれに併せた通関手続きの簡素化である。コンプライアンスは、輸出入手続きにおいても、セキュリティ強化と併せ、積極的に活用すべきと認識、コンプライアンスをしっかりやっている企業には、簡素な手続きでの通関を認めるよう求めている。
また、物流全体の最適化のために、保税制度(外国貨物についての蔵置、加工・製造、展示、運送などを可能とする制度)を改革していく必要性にも言及している。

第五は、政治のリーダーシップと官民の協働である。輸出入・港湾諸手続きに関しては、官民どちらも非常に関係者が多く、なかなか進んでいないのが現状である。そこで、政治がリーダーシップを発揮するとともに、官民の協働を図る必要があると提言している。

第六は、国際的な動向への対応である。特に米国などでは、いわゆるACE(エース)という貿易に関する新システムを開発中である。そこでは、輸出入業務を含む、一企業やグループの取引情報がアカウント単位でまとめられて把握されることになる。こうした動きは米国以外にも拡大中であり、日本も戦略的に対応していく必要があると指摘している。

◇ ◇ ◇
※1 シングルウィンドウシステム
複数の行政機関(港湾管理者、税関、海上保安部など)の窓口で行われている重要項目を含む各々の輸出入手続きを連携させ、事務所端末での1回の入力・送信で全ての必要な手続きを行うことが可能となるシステム。
※2 24時間ルール
2003年2月から外国港において、対米輸出貨物を積み込む24時間前までに、貨物情報を米国税関に事前申告することを義務付ける制度。米国外の運送人などに対する規則で、14項目に及ぶ詳細な貨物情報を申告する必要がある。
【産業本部国土担当】
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