日本経団連タイムス No.2730 (2004年7月15日)

地球温暖化対策推進へ

−日本経団連が意見書を発表/民間の自主性尊重など主張


日本経団連は12日、「地球温暖化対策の着実な推進に向けて」と題する意見書を発表した。地球温暖化問題では、政府は地球温暖化推進大綱(大綱)に基づいて対策を進めているが、2002年度の二酸化炭素などの温室効果ガス排出量は、1990年から7.6%増加しており、結果は芳しくない。そこで現在、新大綱の策定に向けて、政府で対策の見直しが行われているが、環境省は環境税や排出量取引制度など、産業活動に悪影響を与えかねない追加対策を検討している。
こうした状況を踏まえ、同意見書は、国民・企業・政府が一体となって問題解決にあたることや、民間の自主性を尊重することを主張。さらに、産業界も、民生・運輸部門への貢献など、新たな取り組みを積極的に推進することを宣言している。
同意見書の具体的な内容は次のとおり。

1.京都議定書の目標達成に向けた基本的な考え

温暖化対策では、大綱で強調されている経済と環境の両立を前提とすべきであり、省エネや技術革新を通じ、経済活動あたりの二酸化炭素排出原単位を改善する対策を中心とすべきである。環境税や企業に排出枠を割り当てる国内排出量取引制度のような、規制的で経済統制的な対策は、我が国産業の競争力を弱め、生産活動を海外移転させ、地球規模での温室効果ガスを増加させることになり、導入すべきでない。
経済活動の変動によって目標が達成されない場合は、クリーン開発メカニズム(CDM)などの京都メカニズムを積極的に活用することが重要である。

2.産業界の温暖化対策への取り組みの強化

  1. 「日本経団連環境自主行動計画」の目標(2010年度の二酸化炭素排出量を1990年度以下にする)を、社会へのコミットメントとして、確実に達成する。また、同計画の補完として、海外での植林活動や技術を活用した温室効果ガス削減プロジェクトを進める。
  2. 製品の省エネ性能や自動車燃費の向上にも関わらず、温室効果ガスの排出が増加している民生・運輸部門において、(1)トップランナー基準を満たした省エネ製品やクリーンエネルギー車、省エネ住宅用建材などの開発・普及 (2)省エネに関する情報やサービスの提供 (3)荷主企業と物流事業者の連携による物流の効率化 (4)温室効果ガスを吸収する森林整備活動の推進 (5)オフィスや従業員の家庭・通勤での省エネ推進――のような取り組みを強化する。
  3. 企業の自主的な取り組みとして、温室効果ガス排出量の積極的な情報公開を進める。

3.政府に対する期待

  1. 政府や地方自治体・学校などの公共機関も、産業界と同様に自主行動計画を作成し、具体的な温暖化対策を率先して進めることが重要である。
  2. 国民に政府の温暖化対策が知られていない現状を踏まえ、政府は効果的な情報提供のあり方を検討し、実行すべきである。
    また、「サマータイム制度」についても、国民意識の醸成の契機として、具体的な検討を進める必要がある。
  3. 温暖化対策の切り札である原子力を着実に推進することが不可欠である。特に、既設の原子力発電所の設備利用率を向上させるため、安全確保を前提に、定期検査体系や規制の見直しが必要である。
  4. 京都議定書の目標を達成するため、政府の責任において京都メカニズムを活用すべきであり、開発援助の一環として、CDMプロジェクトを推進することも重要である。
    また、民間企業がプロジェクトを進める場合における会計や税制面での取り扱いの明確化などの環境整備が求められる。
  5. 政府が産業界の取り組みや貢献を積極的に評価し、資金面・税制面で支援するよう期待する。

4.おわりに

温暖化問題の解決には、技術革新を柱とした長期的かつ地球規模の視点からの取り組みが不可欠である。大綱の見直しにあたっては、技術革新の主体である企業の活力を殺ぐことなく、民間の自主努力や創意工夫を中心にした実効のある対策や制度の整備を強く要望する。

【環境・技術本部環境担当】
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