日本経団連タイムス No.2731 (2004年7月22日)

「新産業創造戦略」、直ちに具体化を

−中川経産相と懇談/日本経団連、強力な実行を求める


日本経団連の産業問題委員会(齋藤宏共同委員長、岡村正共同委員長)は14日、東京・大手町の経団連会館に中川昭一経済産業大臣を迎え、懇談会を開催した。懇談には、奥田碩会長や柴田昌治副会長、和田紀夫副会長、関係委員長らが出席。中川経産相の強いリーダーシップの下でとりまとめた「新産業創造戦略」について、意見を交換した。

懇談ではまず、中川経産相が「新産業創造戦略」のポイントについて解説を行った。その中で中川経産相は、同戦略が、(1)産業人材の強化 (2)知的財産の保護強化 (3)研究開発の重点化――などの施策を柱にしており、燃料電池や情報家電、ロボット、コンテンツ、健康・福祉と環境・エネルギーの機器・サービス、ビジネス支援サービスなどの「戦略7分野」において、2010年には合計して約300兆円の生産額をあげることを期待していると語った。さらに、地域を再生するための産業分野の発展に向けた施策を盛り込んでいることも明らかにした。その上で中川経産相は、「わが国での新産業創造の鍵は人であり、人づくりへの支援を強化すべきである」ことを強調した。

■ 意見交換

意見交換では日本経団連側から、「産業の現場の声を集約した取り組みは評価できる」(岡村共同委員長)、「産業競争力の強化には産業育成に加え、地域産業のパートナーとなる海外企業の誘致なども検討すべき」(柴田副会長)、「情報ネットワークにおいて高度なセキュリティを安価で提供するためには、国の支援が必要」(和田副会長)、「健康・福祉の機器・サービス産業の発展のためには医療・介護などの制度改革が不可欠」(高原慶一朗評議員会副議長)、「消費が飽和すればするほど地域性が強くなる傾向にあり、地域ごとの戦略が重要」(鈴木敏文評議員会副議長)などの意見が出された。

これらに対して中川経産相は、「国際化の推進はリポート(新産業創造戦略)の前提。世界への流れと地域への流れの両方を加速していく」「情報通信分野の競争は激しく、国としても税・財政面での支援をしたい」「来年は介護、再来年は医療と、政府も着実に制度改革を進めていく」などと応えた。

また、みずほコーポレート銀行頭取でもある齋藤共同委員長が、「産業金融と事業戦略は車の両輪。事業リスクの評価や資本性のある金融手段などにより、金融機関としても積極的に新産業創造に加わっていきたい」と述べたほか、原良也新産業・新事業委員長は「日本は製造業に強く、サービス業に弱いとされるが、健康・福祉分野などでは、海外でも競争力があるはず」との考えを示した。

これに対し中川経産相は「債権や在庫などを担保とする制度づくりにも取り組んでいる」「どのように技術・サービスを海外で提供するのか、議論を深めたい」と語った。

さらに、依田巽産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会長からは、コンテンツ制作設備やソフトウェアは短期での更新が迫られていることから、減価償却制度の見直しなど、コンテンツ振興税制の導入を要望。中川経産相は「コンテンツビジネスの振興と減価償却制度の見直しに向け、税制当局に粘り強く働きかけたい」と述べた上で、具体的な検討をすでに指示していることを明らかにした。

最後に総括した奥田会長は、「観光産業も戦略分野と位置付けるべきではないか」と注文した上で、アクション・プログラムの強力な実行を求めた。

【産業本部産業基盤担当】
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