日本経団連タイムス No.2731 (2004年7月22日)

日本経団連、「第2回社史フォーラム」開く

−編纂の共通課題研究


日本経団連は14日、東京・大手町の経団連会館で「第2回社史フォーラム」を開催、全国から社史編纂担当者など、約100名が参加した。プログラムは、(1)基調講演「語り継ぐ価値」(吉野浩行・本田技研工業取締役相談役、日本経団連副会長) (2)「多種類の社史を作る意義 ― NECの事例」(入野弘道・日本電気元社史編纂室編集マネージャー) (3)「基点・典拠としての年表 ― その考え方・作り方」(武田晴人・東京大学経済学部教授) (4)「内容へのアプローチ ― 目次と索引について」(村橋勝子・日本経団連社会本部情報メディアグループ長)――の4つ。今年2月に開催した第1回の社史フォーラムは、社史の意義と機能に重点を置いた社史の「理念編」というべきものであったが、第2回となる今回は、社史編纂に共通する課題を取り上げた。

冒頭に行われた吉野副会長の基調講演では、本田技研工業の創立50周年記念誌『語り継ぎたいこと〜チャレンジの50年』の編纂過程・方針と、創業者・本田宗一郎氏など先人の言葉や考えをからめながらホンダの歴史を紹介。その中で吉野副会長は、社是、すなわち会社の目的・存在理由は、環境や時代の変化とともに刻々と変わっても、基本理念や運営方針は創業当初からほとんど変わっていないことや、同社が”夢”を大切にし、その実現に向けて他に頼らず「松明は自分の手で」を掲げてきたことなど、同社「50年史」の基本コンセプトが、「企業フィロソフィーの伝承」であったことを強調した。
また、海外展開する企業にとり、英文社史は現地の従業員が自社のことを理解するための唯一の資料であるために、海外で非常に活用されていることなど、英文社史の役割の重要性も指摘した。

続いて、入野弘道・日本電気元社史編纂室編集マネージャーが講演。最近は、数種類の社史を作るケースが出てきており、日本電気でも、『日本電気株式会社百年史』(正史)、『NECの100年』(普及版)、『NEC WAY』(CD―ROM版)、『NEC Corporation 1899―1999』(英文版)と、4種類の社史を編纂した。
これらすべての「百年史」編纂にたずさわった入野氏は、各社史の編纂目的と対象を挙げ、それぞれの効用を説明。学術性・客観性を重視し、歴史書としての評価に堪える「正史」のほかに、簡潔で読みやすい「普及版」をつくるには、「正史」の内容・概要が固まっている必要があることや、英文社史をつくる場合には、日本語のものを単に英訳しただけでは海外で理解されない事柄が多く、英文社史用の日本語原稿を新規に書き下ろすのがよいことなど、経験に基づいた的確な指摘があった。また、CD―ROM版は、「マルチメディアのNEC」を象徴するものを意識しつつ、操作のしやすさや楽しさ(30分でわかるNECの歴史を収録)、情報量の豊かさを満たすものをめざしたことを紹介するとともに、近年の事業の広がりやメディアの変化への対応などを、今後の課題として挙げた。

東京大学の武田教授は、社史編纂の基点であり、本文の記述を補完するデータともなる「年表」について論じた。武田教授は、「年表は無味乾燥にみえるが、ちょっとした工夫をプラスすることにより、機能的な年表がつくれる」ことを強調。解説欄をつけた「読む年表」、索引機能を付加した「調べる年表」など実例を紹介したほか、後で困らないために必ず「出典」を記録することを勧めた。
さらに、社史本文の執筆にとりかかる前段階で年表を作成し、大まかな流れを理解した上で執筆構想を練れば、「網羅性」や「話題性」のある社史をつくれることも指摘。根気が要る作業でありながら評価されにくい年表づくりが、社史編纂の基本であることを強調した。

最後に登壇した村橋講師は、社史が埋蔵資源化している理由の一因として、活用手段が不十分であるとした上で、「数十年にわたり利用される社史に索引は不可欠であり、詳細な目次と索引が有機的に連携してこそ、社史は活性化される」との考えを述べ、目次と索引について、どのような配慮・工夫が必要か、具体的に説いた。

【社会本部情報メディア担当】
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