日本経団連タイムス No.2733 (2004年8月5日)

西室日本経団連副会長が出席
「社会保障の在り方に関する懇談会」第1回会合開く

―現行制度の不公平さなどを指摘/「全体的再構築」を強調


日本経団連(奥田碩会長)の西室泰三副会長は7月30日、社会保障制度全体の見直しを検討するために設置された「社会保障の在り方に関する懇談会」(細田博之内閣官房長官の私的懇談会、7月8日号既報)の第1回会合に出席した。意見交換で西室副会長は、進展している少子化問題や、将来不安が増大している国民負担、世代間や世代内で生じている現行の社会保障制度の不公平さなどを指摘するとともに、社会保障制度を全体的にとらえて再構築する必要性を強調した。

懇談の冒頭、司会を務める細田官房長官が、先の通常国会での年金改革法案の審議における3党合意や、日本経団連と連合からの小泉純一郎首相への申し入れ(4月29日号既報)、さらに閣議決定された「基本方針2004」の中でも、社会保障改革の問題提起があったことから、同懇談会を新設したと述べるとともに、社会保障制度全般について検討したいとあいさつした。

■ 意見交換

意見交換で発言した西室副会長はまず、同懇談会の目的は社会保障制度全体をとらえた制度の再構築にあるとの認識を示すとともに、経済界として同懇談会に対して大きな期待を寄せていると語った。
また、来年に介護保険制度、再来年に医療保険制度をそれぞれ改革することとなっている現在のスケジュールについて、「この懇談会での議論や結論からみて、そのスケジュールを見直すべき点があれば、その見直しを懇談会として示してはどうか」との考えを明らかにした。
さらに西室副会長は、社会保障制度と深く関係している少子化問題についても言及。少子化対策に取り組むことはよいとしたものの、その結果に期待して社会保障改革を行うと楽観的なものとなると警鐘を鳴らし、少子化対策と社会保障制度のバランスをとりながら改革を進めることが重要との見解を述べた。
また、国民の間で高まっている負担への将来不安については、将来の負担がどこまで増えるのか、給付がどの程度抑えられるのかわからないことが原因とした上で、「将来をしっかりと見据える必要がある」と語った。
最後に西室副会長は、現行の社会保障制度における世代間、世代内の不公平についても触れ、「公正な仕組みとすることで、国民が参加できるようにすることが重要である」と述べ、そのような社会保障に改革すべきとの考えを示した。

意見交換ではこのほか、「勉強会ではなく、問題解決型に議論する場としてはどうか」「この懇談会の目的は新しい社会保障制度をつくり出すことととらえている」といった同懇談会に対する意見や、「公的に担う部分と自助努力の部分をどうバランスするかが重要」「(国民所得に占める税負担と社会保障負担、財政赤字を合わせた割合である)潜在的国民負担率50%を念頭において全体を抑制していくべき」「税制と財政、社会保障制度の一体的な見直しが求められている」「税金の引き上げや給付の抑制も必要」など、さまざまな意見が出された。

9月10日の次回会合では、連合の笹森清会長が現行の社会保障制度について問題提起を行う予定となっている。
日本経団連は、社会保障制度を財政や税制とあわせて一体的に改革し、総合的なビジョンを示して国民の信頼・支持を得ることが重要との考えから、その実現に向けて、同懇談会のメンバーである西室副会長をバックアップし、引き続き政府等に働きかけていく。

◇◇◇

社会保障の在り方に関する懇談会は、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくために、年金や医療、介護など社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付のあり方を含めた一体的な見直しを行うことが目的。(1)社会保障制度の基本的考え方 (2)給付と負担のあり方 (3)社会保障制度のあり方――などを検討事項に議論を行い、年内に論点を整理することとしている。
メンバーには西室副会長のほか、石弘光・税制調査会会長や笹森清・日本労働組合総連合会会長、潮谷義子・熊本県知事、杉田亮毅・日本新聞協会理事、宮島洋・社会保障審議会年金部会長の民間有識者6名、細田博之内閣官房長官、竹中平蔵内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、麻生太郎総務大臣、谷垣禎一財務大臣、坂口力厚生労働大臣、中川昭一経済産業大臣の6閣僚が名前を連ねている。

【国民生活本部社会保障担当】
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