日本経団連タイムス No.2738 (2004年9月16日)

日本経団連が第8回起業フォーラム開催

−大学発ベンチャー企業8社、技術などを紹介


日本経団連は3日、東京・大手町の経団連会館で「第8回起業フォーラム」を開催、日本経団連会員企業やベンチャー企業経営者ら約170名が出席した。今回は、大学の研究成果を技術移転する形で事業化していく大学発のベンチャーを早くから支援している慶應義塾大学の清水啓助・知的資産センター所長(商学部教授)が講演したほか、バイオ・医療とナノテク・ITの2つの分科会に分かれて、大学発のベンチャー企業8社が、それぞれの技術や事業概要を紹介した。

冒頭あいさつした高原慶一朗・起業フォーラム代表世話人(日本経団連新産業・新事業委員長)は、政府が打ち出している『新産業創造戦略』について、「日本は今後の施策として新産業・新事業創造を強力に推進していく方向にある」と述べた上で、日本経団連も同フォーラムなどを通じて新産業・新事業を支援・育成していく考えを示した。
さらに、同フォーラムが、日本経団連会員企業とベンチャー企業の接点をつくり、情報交換や人的交流を深めてきた結果、多数の業務提携や出資の受け入れといった具体的な成果を生んでいると説明。今後は同フォーラムへの出席が、ベンチャー企業のステップアップにつながる「ステイタス」となるよう、同フォーラムの運営委員会(委員長=堀井愼一・日本ベンチャーキャピタル協会会長)が、企画の充実に向けた一層の努力を行っていることを報告した。

事業化には大学の研究成果と企業の開発力の融合が不可欠

続いて、清水・慶應義塾大学知的資産センター所長が、「大学のチャレンジ〜研究ベンチャーのスタートアップ支援〜」と題して講演した。

清水氏はまず、事業化には、大学の研究成果と企業の開発力の融合が欠かせないとした上で、「その成否は研究ポテンシャルを引き出す企業の能力にかかっている」と述べた。しかし、市場がなかったり、事業化のイメージがない新しい研究には、企業は関心を持たず、そのような研究が放置されている現状を指摘。また、企業には起業家精神を持った人材が多くいるものの、リスクに対する政策的支援が整っていないため、企業とのアライアンスが組めない状況が続いていると問題を提起。その解決には実用化に向けての研究の検証、製品開発や販売経路も含めた事業化への構想などを総合的に進める「研究開発型ベンチャー」の設立を通じてベンチャーのインフラを拡大していくことが重要との見解を示した。
そこで事例として、慶応義塾大学のベンチャーに対するチャレンジ制度を紹介。「スタートアップ支援プログラム」と称し、研究開発型ベンチャーの立ち上げに必要な、(1)ベンチャーフォーラムの発足 (2)アントレプレナー資金の創設(最大100万円) (3)将来の利益を期待する株や新株予約権等のエクイティーの引き受け――などを盛り込んでいると説明した。その上で、「研究開発型のベンチャーと優れた経営チームとの連携が進めば、大学の研究は革新的な技術を創出し、世界に発信できる」と環境整備の早期推進を強調した。

分科会は場所を2つに分けて開催。バイオ・医療関連分野では「オキシジェニクス」「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ」「インターサイト・ナノサイエンス」「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」が、IT・ナノテク分野では、「ブイキューブ」「エイ・アイ・エル」「メムス・コア」「宇宙情報技術研究所」が、事業内容やセールスポイントを説明した。

フォーラム終了後には懇親の場が設けられ、今回事業紹介を行った各ベンチャー企業のブースで、一般参加者が質問している姿が見られた。ベンチャーキャピタルに勤めるある参加者は、「これまでこのフォーラムには3回ほど参加しており、実際に業務連携まで至っているものもある。いろいろな情報交換ができるので、ビジネスチャンスが広がっている」と同フォーラムに出席する意義を語った。

日本経団連起業フォーラムの詳細については、ホームページ(http://www.keidanren.or.jp/japanese/profile/kigyo/index.html)を参照のこと。

【産業本部産業基盤担当】
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