日本経団連タイムス No.2739 (2004年9月23日)

グローバル・サービスが非製造業のカギ

−学習院大学・宮川教授、日本経団連経済政策委で講演


日本経団連の経済政策委員会(千速晃委員長、井口武雄共同委員長)は10日、東京・大手町で会合を開催し、学習院大学の宮川努教授から、わが国非製造業の現状や展望について講演を聴取した。

その中で宮川教授はまず、「一国の経済成長は、どれだけダイナミックな産業構造変化が起きるかによって決まる」とした上で、「非製造業が今後の原動力として期待される」と語った。しかし現在の日本の非製造業は利潤率が低く、特に1990年代以降に日米格差が拡大したと指摘。その原因として、(1)生産性を上回る賃金上昇 (2)過剰債務の存在 (3)IT化に対応した組織変革などの不徹底――を挙げた。

このうち過剰債務については、「90年代初頭から急増し、現在の年間キャッシュフローに対する比率は、製造業を大きく上回っている」と説明。宮川教授の推計によると、保有土地の売却を考慮した場合、小売業などは、現存設備から得られる収益での債務返済が理論的に可能だが、旅館・宿泊業などは、それでもなお債務超過の状態にあるという。また、資金難で設備更新が進まずにさらなる収益悪化を招き、債務返済が一層困難になる悪循環が生じていると述べた。

IT化の面では、ハード(IT資本が資本ストック全体に占める割合)は米国に見劣りしないものの、IT化による生産性上昇への工夫が遅れていることから、企業の組織変革や組織資本への投資(IT化に対応した人材育成など)が必要であるとした。

今後の展望について宮川教授は、非製造業の各業種・企業が成長していく上でのキーワードは「グローバル・サービス」であると述べ、その方法として、(1)独自ノウハウのグローバル展開(コンビニ、カラオケ、アニメ、回転寿司など) (2)海外企業との提携によるノウハウの吸収 (3)対内直接投資の受け入れ(ホテル業など)――を挙げた。

このほか会合では、経済政策委員会の今後の活動についても審議し、同委員会の下に設置されている企画部会(築館勝利部会長)で「非製造業の特性と主要企業の戦略」を、同統計部会(飯島英胤部会長)で「経済統計の利用促進策」を、それぞれ検討することとした。

【経済本部経済政策担当】
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