日本経団連タイムス No.2747 (2004年11月25日)

経済政策委員会開く

−「当面の経済動向と政策課題」/黒田東彦・内閣官房参与が講演


日本経団連の経済政策委員会(千速晃委員長、井口武雄共同委員長)は10日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、元財務省財務官で内閣官房参与の黒田東彦氏を招き、当面の内外経済動向や日本の政策課題についての講演を聴取した。

講演の中で黒田氏はまず、当面の経済動向について、世界経済は順調に拡大していると述べ、「米国は、今年の実質成長率が4%程度、来年も3.5%程度となろう。失業率も5%台半ばまで低下しているが、インフレ加速の懸念はない」との見方を示した。その上で、米国の問題点として、巨額の『双子の赤字』を挙げ、その解決策は、歳出見直しによって財政赤字を縮減することだと語った。
また、中国に関しては、「今年の実質成長率は9%超、来年も8%近くに達する」との見通しを示すとともに、「景気過熱とその反動が懸念されているが、徐々に引き締め政策がとられており、ソフトランディングできるだろう」と述べた。

一方、原油価格の高騰を「世界経済にとって最大のリスク」と位置づけ、「現在の水準は、産油国と消費国の双方にとって望ましくない」と述べ、1バレル当たり30〜35ドル程度が適正であるとした。

郵政民営化の意義など強調

日本経済については、「今年後半から若干スローダウンし、来年にかけて年率2〜2.5%の成長が続くだろう」と語った。その上で、日本の政策課題として、(1)郵政民営化 (2)財政構造改革 (3)為替政策 (4)自由貿易協定(FTA)の締結推進――などを挙げた。

このうち、郵政民営化について黒田氏は、「構造改革の本丸である」とし、その理由を「道路公団の民営化が決定し、住宅金融公庫や都市公団なども”民間で対応できる分野”から撤退している。最後に残されたのが郵政事業であり、郵政民営化はさまざまなセクターに好影響をもたらす」と説明した。

財政構造改革に関しては、「財政赤字をただちに大幅削減できる状況にはないが、赤字を生み出す構造を変えていくべき」と述べ、三位一体改革(国と地方の税財政改革)の中においても、地方自治体のモラルハザードを招いている地方交付税の改革が特に重要であることを強調した。

また、4月以降、為替介入が行われていない点については、「1ドル=110円前後で安定しており、介入する必要がなかったため」と解説。その上で、「為替政策スタンスは不変であり、異常な動きがあれば、今後も介入が実施されるだろう」と語った。

FTAに関しては、「5年以内にアジア諸国と締結すべき。欧米がアジアとの経済連携をめざす中で、日本が取り残されることのコストは大きい」として、危機感を表した。

【経済本部経済政策担当】
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