日本経団連タイムス No.2748 (2004年12月2日)

科学技術ベースの産業競争力強化を

−「第3期科学技術基本計画」への提言を発表/持続的豊かさ享受へ


日本経団連は11月16日、「科学技術をベースにした産業競争力の強化に向けて」と題する提言をとりまとめ発表した。

政府は、科学技術基本法にのっとり、2006〜2010年を計画期間とする科学技術の5カ年計画、いわゆる「第3期基本計画」を来年度にも策定する予定である。資源の乏しいわが国が、将来的にも持続的に豊かさを享受できるようにするためには、科学技術、とりわけ産業技術が鍵を握っており、その研究開発をリードする上での指針である科学技術基本計画は、日本の産業競争力の強化に向けて極めて重要である。
このような認識の下、産業技術委員会(庄山悦彦委員長、桜井正光共同委員長)を中心に、第3期基本計画の策定に資するべく、将来の経済・社会の姿を想定しながら、取り組むべき科学技術政策をとりまとめたのが、今回の提言である。日本経団連は今後、同提言の実現に向けて、政府など関係各方面に積極的に働きかけていくこととしている。
同提言の概要は次のとおり。

1.現状認識

1996〜2003年度(第1期〜第2期の途中まで)の政府研究開発投資額は、総額約34兆円に達するなど、資金面では着実な拡充が図られてきた。また、研究開発税制や産学連携の推進などの改革も進められてきている。
一方、今後、わが国を取り巻く環境は、中国をはじめとするアジア諸国の急速な成長による競争激化、エネルギー需要の増大、わが国の少子・高齢化の一層の進行など、一段と厳しさを増していくものと予想される。

このような状況の下、これまでの知の蓄積を経済・社会の発展にいよいよつなげる段階、いわば「知の創造」と産業競争力の強化や国民生活の向上といった「活力の創出」との好循環を生み出し、国民に目に見える形での成果として還元していくことが求められている。資源の乏しいわが国が今後、直面する課題を解決するとともに、環境と調和した持続的な発展を遂げていくためには、産業技術こそが力の源であり、鍵を握っている。
そこで、この提言では、2020〜2030年ごろにおいてめざすべき経済・社会の姿として、価値創造型「モノ」創り国家や、エネルギーの安定供給、省エネ・省資源型環境立国などの五つを掲げた上で、その実現に向けて取り組むべき政策を3点にまとめている。

2.第3期基本計画で取り組むべき政策

国や産業の持続的発展の基盤となる技術領域の表

第一は、国や産業の持続的発展の基盤となる重要技術、いわゆるクリティカル・テクノロジーの設定である。これまで、ライフサイエンスや情報通信などの重点4分野を掲げ、基盤技術、目的基礎研究に投資がなされてきたが、今後は、国や産業の持続的発展の基盤となる技術領域(図表)を設定した上で、従来の重点分野に横串を通し、戦略的に研究開発を進めるべきとしている。その際、内閣府・総合科学技術会議のリーダーシップの下、目的基礎研究から応用・実用化研究、さらには国際標準化、人材育成に至るまで、一貫した政策の展開が不可欠であるとした。

第二は、「知の創造」から「活力の創出」へとつなげていくための政策の強化である。従来型の産学連携を越えて、今後は、大学や公的研究機関、産業界とが国家のシステムとして有機的に連携していく必要があり、なかでも大学を核とした「先端技術融合型COE」の新設を強調している。10年先をにらんだ先端的な新融合領域の研究開発を推進することにより、世界に通用する人材の育成に資するばかりでなく、人材・技術が産業界・大学の間で好循環を成し、産業界も含めた知的・人的なセンターに発展していくものと期待される。

第三は、投資額のさらなる拡充と効率的な政策の推進である。現在、約0.8%である政府の科学技術関係経費の対GDP比を引き上げ、現行計画の前提である1%を実現すべきとしている。その際、効率的・効果的な政策推進の観点から、総合科学技術会議による1000億円規模の府省縦割りを廃した予算配分など、その機能を強化すべき点もあわせて指摘した。

【環境・技術本部開発担当】
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