日本経団連タイムス No.2749 (2004年12月9日)

介護保険制度改革で共同意見

−日本経団連など経済4団体が発表/被保険者範囲の現行維持など、経済界の意見反映へ


日本経団連(奥田碩会長)は7日、日本商工会議所、経済同友会、関西経済連合会の各団体長連名による「今次介護保険制度改革に関する共同意見」を発表した。介護保険制度改革は現在、厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会で被保険者・受給者の範囲に絞って議論され、今月10日に報告案が示されるほか、年内に政府・与党が結論を出すとみられている。そこで経済4団体は、介護保険制度の被保険者範囲は現行を維持すべきであるなどといった経済界の意見をあらためて表明し、意見を反映させるべく共同意見をとりまとめ、与党議員や関係官庁等に建議した。共同意見で表明している点は次のとおり。

与党議員や関係官庁などに建議

1.介護保険制度の被保険者範囲は、現行を維持すべきである

被保険者範囲を40歳未満に拡大することは、加齢に伴う要介護状態の改善という制度創設の趣旨および世代間の公平の観点から、反対である。特に若年者は高齢者介護の問題に直面する状況は少なく、また本人自身が給付サービスを受ける可能性も少ないため、その保険料負担に対する理解が得られない。そのため、保険料の未納・滞納問題が生じかねず、制度の公正さを損なう。
事業主と被用者からすれば、厚生年金保険料負担が毎年1兆円弱ずつ増加していく上に、あらたに介護保険料の負担増が積み重なれば、経済の活力と企業の国際競争力を殺ぐことになり、雇用に大きな影響が及ぶことになりかねない。

2.障害者支援費制度の介護保険制度への組み入れは、各制度の趣旨が異なり、適当でない

障害者支援費制度は昨年4月にスタートしたばかりであり、制度の実績についての十分な検証・評価もできていない状況である。また若年障害者には、高齢者と比べ多様なニーズがあり、現行介護保険制度の枠組みの中で効果的に障害者福祉施策が機能するか、疑問である。さらにこうした障害者施策を受益と負担の関係を重視する社会保険に組み込むことにも疑問がある。支援費制度については財源不足がいわれるが、まず、同制度の効率化・合理化を優先し、その費用の適正化を図るべきである。

3.介護保険施設入所時における居住費・食費は、低所得者に対する配慮をした上で、実費を徴収すべきである

多床室入所時における居住費について、一定以上の所得がある受給者に対して光熱水費分のみを自己負担とする案が示されているが、在宅介護サービス受給者の負担に比べて軽すぎると考えられる。在宅介護との均衡や負担能力の観点から、実費を自己負担とすべきである。

4.地域支援事業(仮称)を安易に介護保険制度に組み入れることには反対である

効果のある介護予防の重要性は理解するものの、地域支援事業(仮称)は、要支援・要介護状態と認定されなかった者についても対象とすることから、対象者の基準が不明確になりがちで、際限のない費用の増大を招きかねない。同事業は税を財源として行うこととした上で、費用対効果を明確に検証・把握できるようにすべきである。財源などに関する議論や、効果の検証が不十分なまま安易に介護保険制度に組み入れることには反対である。

【国民生活本部社会保障担当】
Copyright © Nippon Keidanren