日本経団連タイムス No.2749 (2004年12月9日)

第9回起業フォーラム開催

−ベンチャー企業と連携/大企業の事例を聴く


日本経団連は11月29日、東京・大手町の経団連会館で「第9回起業フォーラム」を開催した。今回のフォーラムには、日本経団連会員企業やベンチャー企業経営者ら約150名が出席。「大企業とベンチャー企業の連携に関する最近の成功事例」をテーマに、実際にベンチャー企業と連携した大企業の事例を聴取した。

冒頭のあいさつで高原慶一朗・起業フォーラム代表世話人(新産業・新事業委員長)は、今回のテーマとして、アンケートなどで要望の多かった「大企業とベンチャー企業との連携の成功事例」を取り上げたと述べた上で、「成功事例を学び、新たな連携戦略や起業戦略を推進してほしい」と語った。さらに、日本経団連が12月に「新産業フォーラム」を開催することや、来年1月に訪米調査団を派遣することを紹介、新産業の創出に向けた日本経団連の取り組みをアピールした。

続いて行われた講演ではまず、リクルートエイブリックの高城幸司部長が「大企業とベンチャーの提携が成功するヒント」について語った。その中で高城氏は、自身が『日経アントレ』誌編集長として、大企業とベンチャーを結び付ける事業に携わった経験を振り返り、「接点ができても“提携”に至るまでは、なかなか難しい」と述べた。その上で、提携が成功するためのキーワードとして、「提携の一歩は小さいほうが前に進む」「お互いのビジネスルールの尊重が大切」などを挙げ、相手の企業文化を尊重・理解することが重要であり、企業ごとに意味合いが異なる言語をつなぐためのキーパーソンの存在が大きな意味を持つと指摘した。
また、大企業からみて、(1)ソフト的な観点で業務の実践ができる (2)柔軟でフットワークがいい――などの要素をもつベンチャー企業であれば、パートナーとして成功する可能性が高いとし、その具体的なケースとして、資生堂をベンチャー企業と結び付けた「資生堂インベストメント」の事例を披露した。

次に、山角健・キリンビール執行役員医薬カンパニー副社長が「キリンビールの新規事業戦略とベンチャーへの期待」について講演。バイオ医薬品事業を推進していくために、米国のバイオベンチャー・アムジェン社と提携し、キリンアムジェン社として事業を成功に導いた経緯を紹介した。さらに山角氏は、成功の理由として、(1)提携時の資金力とすばやい意思決定 (2)提携時のアムジェン社CEOの経営能力と人柄 (3)アムジェン社の独立性の尊重(4)利益の研究開発への投資――などを挙げた。また、バイオベンチャーが事業を進めていく中で、事業化の前段階でのコスト増により経営が立ち行かなくなる「死の谷」といわれる時期に陥ることがあると指摘する一方、そのリスクをカバーし合うパートナーシップこそが、事業提携の成功のカギであると述べた。

「東芝におけるネットベンチャー事業」と題して講演した河田勉・東芝ネットワークサービス&コンテンツ事業統括・バリュークリエーション事業部事業部長は、これからの電機産業にはネット事業が必須と述べた一方、同社の最先端情報技術を独立性・自律性のある事業に結び付けていく過程では、アイデアが成功してもマージンの取り方で事業としては失敗したものもあったことを明らかにした。その上で今後は、「コミュニケーション」や「コマース」などといった新しい成長モデルにリンクした事業に取り組んでいくとの意向を示した。

【産業本部産業基盤担当】
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