日本経団連タイムス No.2751 (2005年1月13日)

シンポジウム「WTO交渉とわが国経済界」開く

−講演やパネル討論を展開/経済界の役割を再確認


日本経団連の貿易投資委員会(秋草直之共同委員長、佐々木幹夫共同委員長)は12月24日、東京・大手町の経団連会館でシンポジウム「WTO交渉とわが国経済界」を開催した。同シンポジウムでは、渋谷實特命全権大使(国際貿易・経済担当)や、本間正義東京大学大学院教授、中川淳司東京大学教授が講演したほか、桑田芳郎貿易投資委員会企画部会長、佐久間総一郎新日本製鐵部長、小寺彰東京大学大学院教授、小川恒弘経済産業省通商機構部長、角田博日本経団連参与らがパネルディスカッションを行った。また、佐々木、秋草両共同委員長より、それぞれ開会および閉会あいさつがあった。

はじめに「WTO新ラウンド交渉の現状とわが国政府の戦略」と題して講演した渋谷大使は、新ラウンド交渉の進捗状況について、(1)2004年7月に開催された一般理事会で成立した枠組み合意を受け、関税削減方式等を詰める交渉が進められている (2)05年以降、政治的判断を要する事項の交渉へと移行し、12月の香港閣僚会議を迎える――と説明。日本政府として、「多角的通商交渉体制の信頼性維持に努めるためにも、交渉の成功裡の終結に向けて貢献していく」と語った。

次いで、交渉全体の促進に向けて、その解決が重要となる農業貿易・途上国問題について、課題や解決策を検討すべく講演を聴取した。

まず、農業貿易に関して本間教授が、「日本はWTO農業交渉の促進のためだけでなく、日本経済全体の経済構造改革のためにも、農業の構造改革を加速化しなければならない」と指摘した。

また、途上国問題に関して中川教授は、WTO加盟に伴う負担に見合う利益を得ていないとの途上国の不満を解決することが重要であるとし、日本としても、途上国の関心品目の市場アクセス機会増大を図る必要があるとの考えを述べた。

続くパネルディスカッション「経済界の利益となる交渉とは何か」では、日本経済界の新ラウンド交渉に対する立場や、提言策定、ミッション派遣など、これまでの活動状況に関する説明を行った後、経済界としての交渉への期待や、果たすべき役割などについて議論した。その結果、WTOによる多国間の貿易投資の自由化・円滑化と、EPA(経済連携協定)による二国間・地域間の自由化・連携強化とでは、期待し得る成果がそれぞれ異なることから、新ラウンド交渉の促進が重要であることをあらためて確認した。
また、経済界としても、政府との緊密な連携の下で、途上国などに対して交渉推進に向けた働きかけが不可欠であるとの認識を共有した。

◇ ◇ ◇

WTO体制は、多角的な国際通商体制の維持と発展において中心的な役割を果たしており、その一層の強化は、日本の通商政策上の最重要課題となっている。01年11月のドーハ閣僚会議において開始が決定された新ラウンド交渉は、04年7月開催の一般理事会において枠組み合意が成立したことから、再活性化への道筋が見えてきている。
今回のシンポジウムは、こうした現状を踏まえ、ビジネスの拡大と円滑化に資する交渉結果を得るための方策などを検討することを目的に開催したもの。

【国際経済本部貿易投資担当】
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