日本経団連タイムス No.2752 (2005年1月20日)

日本経団連労使フォーラム(1日目の概要)

−奥田会長の基調講演や鼎談など


日本経団連が13〜14日に開催した「第106回日本経団連労使フォーラム」の1日目の冒頭では、奥田碩会長が「活力ある日本を造ろう〜イタリアに学ぶ多様な生き方・働き方〜」と題して、基調講演を行った。

この中で奥田会長は、IT革命をはじめとする技術革新や経済のグローバル化といった経営環境の変化が激化しており、今日のような変化の激しい時代には、環境変化への対応力が求められると指摘。その上で、「活力ある国家とは、変化への対応力のある国家である」と説き、日本が参考にできる国としてイタリアを挙げ、自身が訪問した際に見聞きしたイタリアの姿を紹介した。
その結論として奥田会長は、「イタリアが、活力と魅力あふれる国として世界中の人々を惹きつけているのは、そこに住む人たちが幸福であること、“こころの豊かさ”があるからだ」と述べ、日本も、経済的な豊かさ中心の社会から、“こころの豊かさ”も大切に考える時代に入っていると語った。さらに、春季労使交渉も、いかにして“こころの豊かさ”を実現するか、労使がともに考える時代に移っていると強調した。

鼎談「これからの企業経営〜どう創る、攻めの経営戦略」では、柴田昌治副会長、奥村昭博・慶應義塾大学大学院教授、小島明・日本経済研究センター会長兼日本経済新聞論説特別顧問の3氏が登壇し、(1)日本経済の現状分析 (2)「攻めの経営」のあり方・ポイント (3)グローバルな経営環境変化への対応 (4)21世紀の企業理念・哲学 (5)日本の経済・社会が豊かで活力を持ち「魅力」あるものであるための条件――などについて議論した。
この中で柴田副会長は、日本経済が回復基調で推移している今こそ「攻めの経営」に転じるべきと主張し、(1)ほかの国でつくることができない高付加価値なものを生み出すこと (2)異質な考えの人を日本に取り入れること――が大事であると指摘。
また、スイスのIMDによる国際競争力の評価において、1990年代半ばまで1〜2位であった日本の評価が、2004年は23位であることを紹介した上で、対日直接投資額を増やすなど、国外の経営資源も活用して国内を活性化する「内なる国際化」が必要であると強調した。
さらに柴田副会長は、競争力の源泉である「現場力」が低下し、日本の強みである「ものづくり力」が落ちてきていると警鐘を鳴らし、技能を次代に伝承することの重要性を説いた。

続いて、「構造改革と日本経済」をテーマに講演した吉川洋・東京大学大学院教授は、(1)日本経済の現状 (2)マクロ経済政策 (3)雇用をめぐる情勢 (4)構造改革とは何か――について解説し、「効率性」と「公平性」の追求が永遠の課題であると結んだ。

1日目の最後は、「労働組合運動の進むべき道」について、連合の笹森清会長が講演。連合が21世紀ビジョンとして掲げている「労働を中心とした福祉型社会」をどう実現するかが、最重要課題であると語った。

【出版・教育研修本部研修担当】
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