日本経団連タイムス No.2752 (2005年1月20日)

採用実施企業・採用人数、2年連続で増加

−2004年度「新卒者採用アンケート調査」集計結果


日本経団連は20日、2004年度の「新卒者採用に関するアンケート調査」の集計結果を発表した。これによると、採用を実施した企業、採用した人数ともに2年連続で増加したことや、採用活動の早期化に一定の歯止めがかかったことなどが明らかとなった。同調査結果の概要は次のとおり。

1.採用実施企業・採用人数は2年連続の増加

採用を実施した企業は、前年度より1.9ポイント増の87.6%で、このうち、採用人数を増やした企業は51.0%(前年度35.1%)と大幅に増加した。
企業業績の回復などにより、採用に積極的な企業が増加している一方で、採用内定者に対する評価では、「良い人材が採用できた」との回答は58.9%(前年度比4.2ポイント減)にとどまっている。採用に対する企業の姿勢が、一定水準以上の数を揃える「一括大量採用」から、個別に資質や能力を問う「厳選採用」に転換していると思われる。

2.4月上旬に採用活動を開始した企業が大幅に増加

採用活動の開始時期を早めた企業は14.4%(前年度27.6%)に減少し、4月上旬に開始した企業が33.8%(同15.0%)に倍増した。これは、日本経団連が会員企業に呼びかけた「新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」が、採用活動早期化に一定の歯止めをかける効果があったものとみられる。

3.春季一括採用以外の採用形態が拡大

「説明会・選考会の複数回開催」(85.0%)、「オープンエントリー(公募制)」(73.3%)など、特徴ある採用形態や手法を導入する企業が近年増加傾向にあり、今回の調査では特に、通年採用の実施企業が約3割(29.7%)に上ったことや、「春季一括採用に秋季採用を追加」した企業が増加した点に特徴が見られる。
また、「海外大学卒業者の採用を行った」企業は20.4%(前年度比2.8ポイント増)で、毎年徐々に増加している。企業が、採用対象者を国内に限らず、海外大学の卒業者にも広げている実情がうかがえる。

4.採用選考ではコミュニケーション能力を重視

企業が採用時に重視する要素の順位(複数回答)は、第1位「コミュニケーション能力」(75.0%)、第2位「チャレンジ精神」(56.6%)、第3位「主体性」(50.4%)、第4位「協調性」(45.4%)、第5位「誠実性」(34.3%)で、前年度と同じ順位になっている。

5.倫理憲章に則った採用活動を実施した企業が増加

日本経団連の倫理憲章に則った採用活動を行ったかについては、「正常な学校教育と学習環境の確保」(85.5%)、「採用選考活動の早期開始の自粛」(76.2%)、「公平・公正な採用の推進」(98.1%)、「情報公開の徹底」(94.9%)と、倫理憲章で掲げている4項目のすべてにおいて、多くの企業が「実施できた」と自己評価している。
倫理憲章の趣旨実現を呼びかけ、04年度の採用活動から初めて実施した「共同宣言」の効果については、「採用活動早期化の歯止めに効果があった」が約6割(58.3%)、「効果がなかった」が約3割(29.9%)となっている。「共同宣言」の実施について企業からは、「倫理憲章の趣旨を、さらにすべての企業に徹底させてほしい」との要望や、「早期化に一定の歯止めはかかったが、4月以降に選考が重なった」などの意見も寄せられた。

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「新卒者採用に関するアンケート調査」は、就職協定が廃止された1997年から、大学・短大等の新卒者採用活動の実態を把握することを目的として、毎年10月1日の正式内定日以降に、無記名アンケート形式で実施しているもの。8回目となる今回の調査は、11月に会員企業(東京経営者協会会員企業も含む)2087社を対象に実施し、回答企業数は775社(回答率37.1%)であった。回答企業の内訳は製造業47.1%、非製造業52.9%、従業員規模別では、1000人以上56.2%、1000人未満43.8%となっている。

【出版・教育研修本部教育問題担当】
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