日本経団連タイムス No.2753 (2005年1月27日)

教育の今後の方向性で提言

−教育機関間の競争促進など/教育問題委員会がとりまとめ


日本経団連(奥田碩会長)は18日、「これからの教育の方向性に関する提言」を発表した。同提言は、国の基本問題検討委員会における、これからの国のあり方についての報告書とりまとめ(1月20日号既報)に向けた審議に合わせて、教育問題委員会(草刈隆郎委員長)が教育の基本的枠組みについて検討を行い、その結果をとりまとめたものである。

同提言はまず、現在の教育は、次代を担う者に社会で必要とされる知識や判断能力を身につけさせているとは言いがたいことや、日本の伝統・文化・歴史についての教育も不十分であることを指摘するとともに、その要因として、現行の教育制度が新規参入を阻む仕組みになっていることや、社会のニーズに応えなくとも学校が存続できる構造になっていることなどを挙げている。さらに、基本的なしつけや倫理観を教えなければならない家庭や地域の教育力が低下していることにも言及している。
こうした状況を踏まえ、同提言は、今後の教育のあり方について、次の5点を提案している。

第1に、教育の質を向上させるために新規参入を拡大し、学校間の競争を促進すべきであると主張している。教育に関してさまざまなノウハウを有する主体が、学校の設立や運営に参画できるように、教育基本法6条1項の規定を改め、私立学校のみならず、株式会社立学校やNPO立学校の設立促進を求めている。

第2に、教育の受け手が選んだ学校に教育予算を渡し、学校が社会のニーズに応える仕組みを作るよう求めている。その実現のために、義務教育と、各大学に共通に設けられている講座を対象に、バウチャー制度を導入することを提案。その導入に際しては、私学助成の根拠を明確にするため、憲法89条の規定の見直しを求めている。

第3に、日本人や国際人、さらに社会の構成員としての素養と常識を身につけた人材を育成するために、教育内容面で今後重視すべき点として、(1)自国の伝統・文化の継承、歴史教育を通じ、郷土や国を誇り、諸外国の人にも魅力ある国にしようという気持ち(国を愛しむ心)を育む教育 (2)社会の構成員としての責任と義務に関する教育 (3)有権者としての権利行使など政治に関する教育 (4)宗教に関する知識やその意義を教える教育――を提案している。
その上で、こうした教育が学校現場できちんと実施されるよう、教育基本法の関係条文の見直しを主張している。
さらに、各学校が特色ある教育を行うため、国が策定する学習指導要領は最低基準とし、学級編成やカリキュラム内容、発展的な学習内容などについては、教育委員会や学校が独自に決定できるよう制度改革を行うべきと提案している。

第4に、学校が目標に向けて組織的に活動するための仕組みを確立し、質の高い教育を実現するよう求めている。そのために、評価制度の重要性を指摘するとともに、教員の自己研鑽の必要性を教育基本法に盛り込むことや、教職員組合が職場環境や待遇の改善に取り組む本来のあり方に徹すべきだと提案している。

第5に、教育の基本は家庭にあることを確認するとともに、規律を順守することなど、生徒や保護者など教育サービスを受ける側の責務も教育基本法に規定すべきであると主張している。また、学校と家庭、社会の交流・連携の重要性についても、教育基本法に盛り込むことを提案している。

【社会本部人材育成担当】
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